家業イノベーション・セミナーvol2~虎屋本舗 高田社長

家業にイノベーションを起こした経営者をお招きし、直面した困難や苦労、どう乗り越えたのかの実例や工夫をお話頂く「家業イノベーション・セミナー」。第二弾は広島県にある創業400年の老舗和菓子屋「虎屋本舗」の16代目、高田信吾氏にお話いただきました。
当日のイベントレポートをお送りいたします。

ロックとファッションと哲学という生き方

敬愛する音楽はレッドツェッペリン。ファッションはアイビーファッション。若いころに哲学書を読み漁り、行き着いた先はニーチェ。

「ツェッペリンのことならば1週間は話せる」と仰るほど深く聴き込んだロックの精神が、その後のお話の中でもたびたび垣間見られます。

「社長なんて辞めてしまえ!」と温厚な先輩が激怒

先代の危篤の報を聞き、勤めていた会社にすぐに辞表を出し、家業に入られた高田社長は、その後すぐに社長を継ぐことになります。


社長就任のお祝いとして、先輩方と飲み屋に行った時のエピソードがとても印象的でした。
以前はスーツを着こなしバリバリ仕事をされていた環境から一転、白いユニフォームを着て和菓子を作る仕事へ。当初はそのギャップに慣れず、自分の会社をかっこ悪いな、と思われていたそうです。
飲み屋で名刺を渡す時にふと、そんな思いが言葉に出てしまったところ、普段は温厚な先輩経営者が、「そんな志でやってるぐらいなら、社長なんて辞めてしまえ!」と激怒され、高田社長は泣きながら家路についたとのことです。

また、古参社員からは認めてもらえず、毎日いじめられる日々。とにかく本を読み、現場の仕事を知り、我慢を続けながら、徐々に社員の信頼を築いていかれたそうです。

会社を背負う覚悟を持つことになったきっかけは、ある事情から突然追うことになった多額の負債。その返済は1000年かかっても難しい、と金融機関に言われ、それなら1000年続く企業を作ってやる!と強く思われたそうです。

その後は孫氏の兵法を活用した経営理論を学び、日々、実践と仮説検証を繰り返してこられました。

科学×芸術×哲学

経営に必要な要素は、「科学」「芸術」「哲学」の3つだと語る高田社長。
科学と哲学だけでは独創的なアイディアは生まれない。芸術と哲学だけでは再現性が無い。科学と芸術だけでは倫理が無い。ご自身でそのように結論を導き出したその洞察の深さは、非常に勉強になるお話でした。

芸術はなかなか身に着けるのが難しいが、どうしたら良いか?という質問に対しては、自分ですべてを身に着ける必要は無く、それを持っている人間を登用すればよい、というお答え。その後も様々な知識を活用した、深い経営哲学のお話を多くいただきました。

オープンディスカッション

その後は全国各地から訪れた、地域の家業後継者を交えたオープンディスカッションを行いました。
それぞれに悩みを持つ参加者が、高田社長へ質問をし、それに対して回答、またその回答を深堀りしていく、というスタイルで進行しました。

ある参加者から出た、「父親(現社長)がなかなか決算書を見せてくれない」という悩みに対しては、「銀行との打ち合わせに同席するのが重要。」という高田社長からの回答があり、別の参加者からは重ねて「まずは率直に見せてくれと言うことが大事」や「居ない間に見てしまえばいいのでは?」といったアイディアなどが話されました。

約1時間のディスカッションは、様々な方向に話が広がり、結果として非常に多様な話題が話された場となりました。

交流会

最後は参加者も交えた交流会として、全国各地の様々な方同士が経営について語る、情報交流が行われました。
また当日は虎屋本舗の「びっくりスイーツ」として、たこ焼きそっくりのシュークリームや、コロッケにしか見えないチーズケーキなど、非常にユニークなお菓子が振舞われ、皆さんの話題となっていました。

ご参加頂いた皆様、高田社長、本当にありがとうございました。
家業イノベーション・ラボでは、2020年も、新たな事業を作りだしている家業後継者や、事業成長を志す経営者を支援してまいります。今後も様々なイベントを開催いたしますので、どうぞご期待下さい。