「家業イノベーションLIVE! 2017」を開催! 〜高校生や大学生も参加できる「自分らしい家業への関わり方」を語り合う場〜

2017年12月17日、「家業イノベーションLIVE! 2017」を開催しました。場所は、東京・千代田区の『エヌエヌ生命保険』。家業を継ごうか、継がないか、継ぐとしてもどんな継ぎ方があるのかという疑問は、皆さんのような実家が家業を営む“家業のこせがれ”にとって、10代の頃から考えても遅くはない問題です。そんな家業への思いや悩みを持つ31名の参加者を前に、すでに社会で活躍されている8名の家業イノベーターが、家業のこせがれとしての経験を惜しみなく語ってくれました。

8名の家業イノベーターが登壇。価値ある経験や家業を継ぐ方法を伝授!

 まずは、ファッションブランド「Factelier(ファクトリエ)」を熊本県熊本市を拠点に展開している山田敏夫さん。普通、洋服は工場でつくられ、商社や卸、アパレルショップを経由して私たちの手に届きますが、山田さんは従来の流通を刷新。契約した日本の工場でつくった洋服を、直営店やネットで直接、お客さんに販売しているのです。しかも、洋服の適正価格は工場が決めるという画期的な方法で! 「農家さんが野菜をネット販売する、そのファッション版です」と山田さん。「家業を残そうと無理するのではなく、家業の個性をいまどきのニーズに合わせて新しくするという考え方に転換すれば、結果として家業は残ると思います」とメッセージを送りました。

 東京・足立区にある創業82年の酒屋『TAMAYA』が実家の荻原恭朗さんも、新しい事業を構築しています。『リカー・イノベーション』という子会社をつくり、全国の蔵元と連携しながら自分たちでお酒を開発・製造し、直営する居酒屋やネットで販売。製造から販売まで一貫して行うという、これまでにないビジネスモデルをたった3年間で築き上げました。スゴイ! 『KURAND SAKE MARKET』という3000円で日本酒飲み放題というユニークな店舗も経営しています。

 岐阜県瑞浪市でタイル用の釉薬をつくる『玉川釉薬』のこせがれ、玉川幸枝さんは、「父から『大学を辞めて家業に入れ』と言われて猛反発しましたが、しだいに父の釉薬づくりをかっこいいと思うようになりました」と振り返ります。ただ、実家には入らず、オーダーメイドのタイルを企画・販売する「TILE made」を立ち上げました。「赤いリボンのタイルを壁に貼って、その前で写真を撮ると髪にリボンをつけているように見えるとか」と女子目線の可愛いタイルづくりにも挑戦しています。

 鹿児島県奄美市出身の酒井一徳さんは2011年にUターンして、父親が営む『酒井建築事務所』に入りました。「東京の建築事務所を辞めて島に戻ってきた人間は、『負けて帰ってきた』と思われがち。そうではなく、一度島を出た若い人も『帰ってきて、偉いね』と迎えられるような環境を、僕ら若い世代でつくりたいです」と奄美大島での仕事やデザイン活動について語りました。

 北海道留寿都村で観光業を営む『加森観光』の係長、加森万紀子さんは、7歳のときに家族4人でアメリカに移住。「アメリカのパーティ文化に影響を受け、ホスピタリティの心が芽生えました」と、幼少の頃の経験が今の仕事の原点にあると話しました。

 石川県七尾市で、家業の『七尾自動車学校』の副社長を務めながら、まちづくり会社『御祓川』でも活躍中の森山明能さん。「幼少の頃、父は一緒に晩ご飯を食べたことがないほど、仕事とまちづくりに熱を入れていました。その背中に惹かれ、僕もまちづくり事業に取り組んでいます」と話します。「ただ、パラレルワークを続けていますが、給料は自動車学校からしか取っていません」とのこと。『御祓川』では“若旦那”だからこそできる儲けを度外視したまちづくりに挑戦できるのが楽しいそうです。

 神奈川県相模原市の無農薬栽培の小規模農家に生まれ育った秋元里奈さん。農家は継がず、『DeNA』に就職し、Webサービスやゲームアプリを開発していましたが、「子どもの頃に家族や友達と畑で過ごした楽しい思い出がよみがえり、退職しました。私の強みであるIT技術を使って農業の課題を解決できればと会社をつくり、オーガニック農家に特化した直販サイト『食べチョク』を立ち上げました」と農業に参入した経緯を語りました。

 最後は、和歌山県海南市にある『平和酒造』の跡を継ぐ山本典正さん。景気のよくない日本酒業界で、パック酒の製造から高品質なお酒造りに一大転換を図りました。ただ、「“家業”という言葉には閉鎖的なイメージも。酒造りの仕事をしたいと考えている若い人に対して、敷居を高くしてしまっているのではないかと」と、酒造りだけでなく“家業”のイメージも変革しようと意気込んでいました。
 それぞれに目標や思いを持って、家業にどっぷりと入り込んだり、ちょっと距離を置いて関わりながら、家業と向き合っている様子がうかがえました。皆さんは、どの家業イノベーターの仕事ぶりに共感されますか?

テーマ別に分かれて、テーブル・トーク!「家業をうまく利用する方法は?」

 その後、3つのグループに分かれ、前半・後半で「テーブル・トーク」を行いました。テーマは6つ。前半が「流通革命」「街の活性化」「デザイン」で、後半は「あえて起業する」「地域に貢献しつつ縛られない」「2足のわらじを履く」です。各テーブルに家業イノベーターがつき、ファシリテーターを認定NPO法人『ETIC.』の佐々木健介と、NPO法人『農家のこせがれネットワーク』の宮治勇輔が務めました。

 活気あふれる討論が繰り広げられるなか、「あえて起業する」のテーブルでは、実家が栃木県宇都宮市で石材業を営む、慶應義塾湘南藤沢高等部2年生の谷田部旭さんが、「起業するとき、家業をうまく利用する方法はありますか?」と質問しました。それに対して荻原さんが、「僕は実家の『TAMAYA』を親会社に、起業した『リカー・イノベーション』を子会社にして、今は両方を経営しています。子会社を起業した理由は3つあり、1つ目は、組織の見せ方を変えるため。2つ目は、酒の流通を変えるというビジョンを明確に掲げるため。それによって採用方針も決まり、イノベーティブな意欲のある仲間を募ることができました。3つ目は、家業でもともと付き合いのある銀行を通じて融資を受けやすくなるためです。」と答えるなど、参加者の疑問に家業イノベーターが独自の視点でアドバイスを送っていました。

 テーブル・トークの後に開かれた交流会の席で、谷田部さんに家業についての考えを伺ってみました「最終的には継ぎたいと思っていますが、家業以外にも挑戦したいことがあります。例えば、市内のお寺のネットワークをつくりながら、お墓参りの習慣やご先祖を敬う大切さを若い人たちに伝えていけるような会社を起業することも一つ。別会社か子会社か、あるいは家業の一事業として始めるのか、いろんな方法があることを知りました。じっくりと考えたいです」と自身の将来像を描いていました。

 家業への思いや悩み、自分にふさわしい継ぎ方、そして、将来の夢を語り合った交流会で、新しいつながりがどんどん生まれました。2018年はこうしたイベントを全国で開催し、各地の家業イノベーターと家業のこせがれのコミュニティを創っていこうと考えていますので、高校生、大学生、社会人の皆さん、ぜひご参加を!

家業イノベーション・ラボ 参加高校生・大学生からのメッセージ

家業イノベーターからのメッセージ!

山田敏夫
ファクトリエ 代表(ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役)
玉川幸枝
合同会社プロトビ 代表
山本典正
平和酒造株式会社 代表取締役専務
酒井一徳
株式会社酒井建築事務所/一般社団法人Shall we Design 代表理事
加森万紀子
加森観光株式会社
森山明能
株式会社御禊川/七尾自動車学校 代表取締役副社長
秋元里奈
株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長
宮治勇輔
株式会社みやじ豚 代表取締役社長/NPO法人農家のこせがれネットワーク 代表理事/株式会社ファーマーズバーベキュー 代表取締役