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「家業を継ぐ」ことの意味 加森観光 加森万紀子さん

2018.6.1

娘として家業を継ぐ、という決断はどのようなものだったのだろう。経営者である親を持つ子どもたちは、どんな気持ちで幼少期を過ごし、そして家を「継ぐ」という決断をするのか。シリーズでお送りする今回は、加森観光代表取締役社長の次女であり、現在*は観光庁に出向し観光戦略主査を務める加森万紀子さんに話を聞いた。(*2018年4月取材時)

(聞き手: 安倍宏行 ジャーナリスト ”Japan In-depth”編集長)

「継ぐ」とは先代の想いを「色褪せさせない」こと

「ラッキーでしたね、私にとっては。」そう話し始めた加森さん。インタビューは新緑がまぶしい春の昼下がり、都内で行われた。 「父親が仕事をしているのをずっと見てきたんです。苦労や喜びを近くで見てきて、私もそういうことを共有していきたいという気持ちが芽生えました。もともと、人をエンターテインすることに興味があったので。」

大学を卒業して飛び込んだのはウェディング業界。いわゆるウェディングプランナーとして社会人のスタートを切った加森さん。でもほどなく家業を継いだ。それは、やはりご両親が家に戻って来てほしい、と言ったのだろうか?聞いてみると・・・加森さんはきっぱりとこう言った。

「それは一切ないです。事業をやっている家庭ではよくあると思うんですが、家族の会話が会社の話題なんですね。でも『継いでほしい』と父に言われたことは一度もなくて、『お前の人生はお前の人生だから』と。」

親として子どもに家を継いでもらいたいと思うのは人情だと思うのだが、敢えて口に出すのを控えてしまうものなのだろうか?加森さんが続けた言葉で、ご両親の本当の気持ちが分かる気がした。

「これから来るであろう苦労を人のせいにしなくて済むな、とは思っています。やはり自分で決めた道なので。そこは両親に感謝していますね。」
家業を継ごうと思ったのはいつ頃なのだろう。今回も尋ねてみた。

「ぼんやりと思ったのは中学生の頃ですね。その時ちょうど、会社が大変な時期で、苦労している親の姿を見て子ども心ながら助けたいなぁ、という気持ちが芽生えて…。本格的に考え始めたのは大学の頃です。兄がコミュニケーション学、姉が法律で、私は商学部に行ったのですが、兄弟でバランスとって会社をみていくことを親はなんとなく思っているのかなぁ、と感じましたね。」

大学卒業してすぐ家業には入らなかった加森さん。最初に選んだ仕事はブライダルの会社。3年ほどいて家業に入った。最初は加森観光のプロモーションビデオ作りを任されたという。事業の全容をつかむには最適な仕事と思える。そして、早7年経った今、振り返って大変だったことは何か聞いてみた。

「自分が意識している以上に、社員の皆さんが娘だということで気を使っていたことですね。もっとフランクに叱るところは叱っていただいて仕事していきたいなと思っていたのですが、やはりオープンに話すことができない感じがあって、最初は戸惑ったかな、と思います。でも逆に、女性スタッフさんの方はちゃんと叱ってくれて、男性との違いはちょっと面白いなと思いました。今は前よりフラットにコミュニケーションをとれるようになりました。」

でも・・・と加森さんは続ける。

「でも(社長の娘であると意識されることは)なくなるものではないな、と。そういうことは受け入れて、でも結局大事なのは『お客さまに何ができるか』ということだと思うので、立場を活かして、お客さまにどう喜んでもらえるか、どう還元できるかと考えて、私のできることをやろう、と気持ちを切り替えました。」

加森さんにとって「継ぐ」とはどういうことなのだろう。繰り返し出てきた言葉は「先代の意思」「先代の想い」だった。

「私にとって継ぐとは、『先代の意思を引き継ぐ』ということですね。これは家族だからできることの一つだと思います。社長がどうしてこの事業を始めたのか、どういう想いでお客さまにサービスを提供しているのか。そういう話を日頃聞いていますので、それはすごく贅沢な環境だったと思います。ですから、その想いを引き継いで後世に伝えていきたいと自分も思ってます。継ぐというのは、その想いを色褪せさせずに、次に繋げていくことなんだなと思います。」

まさしくその先代の想いというのが地元への貢献だ。その理念は娘である加森さんにしっかりと受け継がれている。

「うちの会社で最初にでてくるのが、社会に求められてこそ会社が存在するということです。地域の人たちや社会に何かしら貢献できる会社でなければ続かない。それを念頭に置いて、会社はやっていかなければならないなと感じています。」

地域貢献。言うのは簡単だが、そこに根を下ろしている企業だからこそ、そして代々続いている家業だからこそ、地元に貢献するという想いが一層強いのではないか?そう感じた。

最後に加森さんがこれから家業を継ごうとしている人に伝えたいことを聞いてみた

「2世、3世の皆さん、それぞれやりたいことはあると思います。でも(家業があるということは)恵まれた環境なのだと思います。それを活かしてやりたいことをやり、人の為になることに繋げていく。先代やそれを一緒に支えてくれた社員やお客さま、環境を作ってくれた皆様に感謝して、自分がやりたい事、自分が信じる事へ進んでいって、後悔しないように迷わないでいて欲しいなと思います。」

観光庁への出向は今年6月で終わり、加森さんは会社に戻る。国の仕事をしてみて見えてきたものをどう家業に生かすか。加森さんの次のチャレンジを見るのが今から楽しみだ。

加森観光株式会社URL:https://kamori.co.jp