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「継ぐ」前にいろんな経験を積もう! 家業イノベーションCAFÉ! in 札幌

2018.6.30

博多、大阪と続いてきた「家業イノベーションCAFÉ」。今回は札幌に場所を移して開催されました。5人の家業イノベーターがそれぞれの想いを語ると共に、20名近い一般参加者と熱く意見を交わしました。

筆頭は株式会社白石製作所 代表取締役 吉田元海さん。従業員約15名、ステンレス板金工場の3代目で社長歴は3年ほど。東京で外資系企業に勤めていた吉田さんは家業を継いだ当初は工場経営に中々慣れなかった、と振り返りました。そんなある日、コーヒー焙煎機の受注があり、約半年かけて去年5月に完成させ、これだ!とひらめき、祖母の家を改築して「焙煎研究所」という自家焙煎の喫茶店兼焙煎機販売の店舗を作ってしまった吉田さん。すでに焙煎機3台が売れたといいます。喫茶店の売り上げは月10万円ほどとまだまだですが、「やりたいことがやれて楽しい。家業という柱があって、そこから(他の事業に)血を送り込むと何でもできちゃう」と目を輝かせました。将来の夢はなんと「コーヒー農園」経営だそうです。

北海道イナゾーファームの谷江美さんは、農家3代目に嫁いだ方。双子を含む0歳から5歳までの4人の子どものママさんです。夫が新しくトマトの栽培を始めて約10年、有機JASフルーツトマトと農場内で加工した絶品トマトジュースの販売を手掛けています。前職は(株)星野リゾート。約15名の従業員の皆さんと農場内の仕事の仕組みを日々改善。これからは地元士別市を盛り立てるために、「いろんなことにチャレンジしたい」と意気込みます。実は士別に実業団チームがたくさん合宿に訪れるのですが、彼らは食事に美瑛や旭川に行ってしまうそう。そんな彼らの食を担うことも視野に入れているそうで、その為に「新しい仲間を募集中です」と熱い夢を語ってくれました。

荒井優さんは、学校法人札幌慈恵法人 札幌新陽高等学校の校長先生。実は学校は家業ではありません。荒井さんのおじいさまが立ち上げたのですが、39歳の若さで急逝されたのです。荒井さんはソフトバンク(株)で様々な社会貢献活動に携わってきました。特に福島県双葉郡に去年開校した「福島県立ふたば未来学園高校」の設立に関わるなど、東北復興の最前線で活躍した経験をお持ちです。その荒井さんの座右の銘は、「あきらめろ、覚悟せよ、本物を作れ」。水俣市役所職員として水俣再生に尽力した吉本哲郎氏の言葉です。託された新陽高校は学年定員280人に対し、2016年度の入学者はわずか155人ほど。厳しい経営状況の下、「2年しか持たないだろう。」と覚悟を決め、転売すら考えたという荒井さんですが、背水の陣で臨み、わずか1年で入学者を倍以上に増やしました。同高校が今後どう発展していくのか、注目を集めています。

川口洋史さんは漁師です。「魚食系男子プロジェクト」を展開中。魚のブランディングを考えながら、大学で消費者行動を勉強し、広告業に入りました。魚をもっと食べてもらいたい、そんな気持ちを抱いて家業を継いだのは2014年。「オイシイ、でツナガリタイ。」をコピーとして掲げ、鮮魚活じめを看板にした魚直販事業、そして魚の出汁で作ったスープカレー、ピンクサーモンのパテなど次々と新規事業を打ち出しています。「新しいことをやっている実感があります」と語る川口さん。「今ある事業を時代にあったものに作り替える」と意気込みました。

松橋泰尋さんは株式会社松橋農場の代表取締役です。十勝更別村で畑作、黒毛和牛繁殖肥育販売を経営しています。また、飲食店を2店舗経営するほか、キッチンカー事業、お弁当事業なども手掛け、収穫した農産物の加工・販売にまい進中。18歳からベンチャー企業などで揉まれてきた経験を存分に生かしています。実は松橋さんはお婿さん。4代目にあたります。「日本を世界一の農業大国にする」と語る松橋さん。2025年には、「生産者の農産物をコンテナに積んだタンカーで世界を回りたい」と大きなスケールの夢を披露しました。子どもは5人、「奥さん大好き」を自認しています。そんな彼の目標は2046年に長男に事業承継することだそうです。

後半は恒例、参加者と家業イノベーターとの意見交換会。参加者からは、「いつ家業を継ぐ決断をしたのか?」、「新規事業を展開するに当たってのタイミングは?」、「次なる挑戦は?」など質問が相次ぎました。

特に家業を継ぐタイミングについては色々な意見が出ました。吉田さんは友人の金融マンから、「(家業を継ぐタイミングが)遅いと何か息子に問題があるのかと思われる」と言われたエピソードを紹介、「40歳くらいまでには継いだほうがいいのでは」と話しました。一方、荒井さんは、「色んなことを経験してから継いだ方が良い。他人の飯を食う経験は大切」と話しました。松橋さんは「やりたい、と思う時じゃないと継いではいけない」と断言。川口さんは「継ぐ年齢は関係ないかな。ただ、他の業種は経験すべき。今の仕事に役に立っている」と述べると共に、「人に使われるという経験が大事だ」とも。他の人と同様、家業を継ぐ前の武者修行の大切さを強調していました。また、谷さんは、「10年間星野リゾートにいたが、(自分が農業に入るタイミングから)逆算してこのぐらい会社にいよう、と考えていた」ことを明かしました。

参加していた大学2年生が話してくれました。「(家業の)漁師を継ぐのに大学に入る必要があるのか。(卒業後)就職する必要があるのか。色々悩んできたけど、今日、その答え合わせができました。」

「継ぐ」ことにためらいや悩みはつきもの。今回登壇してくれたイノベーターの皆さん、家業に身を投じる前にそれ相応の準備をし、経験を積み重ねてきたのだな、とつくづく感じた1日でした。