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ものづくりを最適化する知恵で作るレタスにクレソン。製造業と農業の両立が、社員の長く働ける環境につながる。

2020.2.13

「美濃国やさい 信長レタス」という商品があります。お弁当に入れても、炒めものに使っても、みずみずしさとシャキシャキ食感が心地よいと評判のレタスです。これは岐阜県瑞穂市で生産されたもの。手がけたのはアグリラボ株式会社。実はこのアグリラボ、もともとは機械加工の製造請負や製造現場のコンサルティングを得意とするユニオン電子工業という会社から生まれました。製造業から農業が生まれる?ここにはどんなストーリーがあるのか。ふたつの会社の代表である児玉浩一さんにお話を伺いました。

製造も検査もできる技術力を受け継いで

 アグリラボを生んだユニオン電子工業は、岐阜県内の大手電子機器メーカーの機械検査、顕微鏡検査の事業からスタートしました。その後、納期短縮やコスト削減といった実績に加え、解析技術のレベルの高さを認められて、検査だけでなく製造請負へ事業を広げます。

 児玉さんは創業社長との縁もあり、約30年前にユニオン電子工業に入社。同社の新たな事業展開を最前線で動かす重要なポジションを担い続けてきました。10年ほど前、先代の引退に伴い、事業の変遷と全体像を知る人物として次期社長の打診を受けたのでした。新しい事業を始める際には常に先頭に立ち、誰よりも同社の事業を理解していましたが、リーダーとしてビジョンを示すために経営について学ぶ努力をしたそうです。そして、将来ビジョンを考える中で課題のひとつとなったのが、いかに今後も社員が安心して働ける職場にできるかでした。

農業に見出した事業の新たな可能性

 製造請負を軸に、独自の技術力を誇ってきたユニオン電子工業でしたが、児玉さんは一抹の不安を抱えていました。

 「製造請負の業績は、景気やお客様の経営状況によって大きく左右されます。事業の柱がひとつだけでは、少しの傾きで雇用を維持できなくなるかもしれません。一方で、製造の現場は交代勤務で24時間ずっと機械を稼働させており、年齢が上がるにつれて体力的な厳しさも出てきます。定年まで続けられるかといったら難しいでしょう。こうした背景もあって、事業の軸を増やすこと、社員の年代や能力に合わせて働ける体制を作ること。ふたつの課題を解決できる方法を考えたんです。

 まず力を入れたのが、メーカー向けのコンサルティングです。当社には、製造業の一連の工程を効率化できる知恵とノウハウがあります。それを武器に、機械メーカーに限らず食品メーカーなど様々な分野でものづくりに携わる人たちの課題解決のお手伝いを始めました。この事業が一定の需要を得ています。

 とはいえ、コンサルティング業務も人によって向き不向きはあります。そこで目をつけたのが、薬草の栽培でした。中国産の製品が市場を席巻している状況で、岐阜県には薬草の生産者を支援する仕組みがあります。これはチャンスかもしれないと思い、農業を始める道を模索しました」。

 思い立ってからの行動は早かったといいます。異業種から農業へ転換した事業者の話を聞きに大分まで足を運び、水耕栽培を知りました。水耕栽培で農業を学びながら、また事業として成立させるならレタスの栽培いと勧められ、種苗業者の助言も受けながら、冒頭に紹介したような特徴を持つ「フリルクリスプ」の栽培を決意。この間、神戸町で希望する農地が見つからず隣の瑞穂市で最適な農地見つかり、その購入に法人格が必要であったためアグリラボを設立しました。新たな会社とともに農業への挑戦が始まったのです。

野菜に味だけでない価値付けを

 アグリラボの野菜は、岐阜県の仲卸業者を経て主に地元で流通しています。レタスを市場に送り出す上で、児玉さんが考えたのは「いかに付加価値をつけるか」という点でした。フリルクリスプを生産する農家は少なく、珍しい品種を水耕栽培で安定的に生産できるのはひとつの強み。さらに、消費者にワクワク感を抱いてもらえるようにネーミングやデザインにもこだわり「信長レタス」と名付けました。

 現在は、レタス以外にクレソンも栽培しています。アグリラボのクレソンは、辛みがちょうど良く、サラダなど生食用はもちろん、和洋中いろいろな料理に合わせることが可能です。クレソンは栄養素を多く含む野菜で、ゆくゆくは薬草の栽培を目指す上で、レタスよりも単価が高く水耕栽培に適した商品をいろいろと試しています。

 「お客様から『アグリラボの野菜でないとダメだ!』と言ってもらえるような存在になるのが目標です。おいしい野菜は世の中にたくさん出回っているので、味以外でも興味をひいて選んでもらえる価値の付け方を考え続けたいと思っています」。

電子部品づくりにも野菜づくりにも共通する頭の使い方

 電子部品製造から農業へ。まったく畑違いに思えるかもしれませんが、共通する点は少なくないと児玉さんは語ります。

 「私たちはものづくりを最適化するプロとして評価をいただいてきました。目の前の資源を生かして、いかに効率的なプロセスを組むかは農業も一緒です。確かに自然相手で不確定な要素は多いですが、データをきちんと残してルール化することの大切さをいつも伝えています」。

 その言葉の通り、ビニールハウスでは異なる条件でレタスを栽培する実験も行われていました。環境の変化があっても誰でも対応できるやり方を編み出す。これは、ユニオン電子工業が長年得意としてきた仕事です。農業のノウハウが定着すれば、製造現場で経験を積んできた社員たちが、次は少し負荷を減らして野菜づくりで活躍できる環境が徐々に整っていきます。作るものは変わっても、頭の使い方は変わりません。アグリラボの事例は、すでにあるものづくりの知恵のさらなる可能性を見つけるために示唆を与えてくれるのではないでしょうか。

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