家業イノベーション・ラボ × JAPAN BRAND FESTIVAL  欧州進出支援プログラム 「Craft Runways 2022」  ワークショップDay1レポート 

「Craft Runways2022」は、伝統産業・工芸・ものづくりに携わる家業後継者の方を対象に、自社の強みを活かし、海外市場における商品開発の挑戦を支援するプログラムです。8月20日には、本プログラムにエントリーした3事業者の皆さんがオンラインワークショップDay1に参加しました。 

第3者の視点も交えて、自社価値を見直す 

ワークショップDay1に参加したのは、愛知県名古屋市で張り箱専門店を営む「株式会社野村紙器」、大阪市で木彫彫刻の製造を行う「株式会社木彫前田工房」、茨城県土浦市で人形製造や「人形屋ホンポ」を運営する「株式会社成島」の3事業者の皆さんです。国内での需要が減少傾向にある中、既存事業の見直しを図り、海外販路開拓という新たなチャレンジをしたいと参加してくれました。 

ワークショップDay1では、まず前回のオランダの方たちへのオンラインヒアリングで得たニーズの整理から始まりました。各グループには、本プログラムを支援する「JAPAN BRAND FESTIVAL」と家業イノベーション・ラボのスタッフが加わり、それぞれの意見や感想を交えながらディスカッションを交わしていきます。その整理が終わると、休む間もなく、次は自社価値の棚卸しです。そして、それらをオランダの方たちのニーズと照らし合わせ、実際に海外展開する際にどんな価値を提供していくのかをブレストしていきます。 

ここで注目したいのが、自社価値の棚卸しです。自社の価値には、「技術的価値」や「機能的価値」「情緒的価値」「社会的価値」がありますが、経営者の皆さんであれば当然それは認識しているはず。しかし、社内や同業者以外の人たち、つまり第3者の視点が入るとまた新たな発見があったり、パワーアップにつながる可能性もあります。 

世界的デザイナーも高く評価する日本のものづくり 

続いて、今回の協業デザイナーであるキャロル・バーイングスさんがオランダからワークショップに参加しました。キックオフイベントでも話してくれたように、日本の数多くの企業と協業してきたキャロルさんは、日本人のものづくりに対する姿勢と優れた技術を高く評価しています。 

「私たちが日本で仕事をするときに感じることは、日本はとても特別な国だということです。日本ほど、ハイテクの技術と代々伝わる手仕事の技術を上手に組み合わせている国は他にないのではないでしょうか。そして、細部にまでこだわるものづくりの姿勢も大好きです。今回は日本国外に対してよいデザイン、よいプロダクトを紹介するとてもいい機会だと思うので、私も一緒に何ができるのかをしっかり考えていきたいと思います」 

キャロルさんの言葉は参加事業者の皆さんを大いに勇気づけました。その後、キャロルさんに実際に自社の強みを紹介していくとサプライズが! なんと、キャロルさんはそれぞれの事業がさらに発展できるアイデアを考えてくれていたのです。その提案は、各事業の強みを十分に理解したうえで新たな挑戦を促すもので、各事業の進むべき方向性を探るだけではなく、既存事業に対して新たな気づきももたらしました。 

一つのアイデアをきっかけに可能性は広がる 

ワークショップDay1の後半は、キャロルさんのアイデアやフィードバックを参考に、より具体的なアイデアを導くためのアイディエーションが行われました。ここで大切なのは、アイデアを評価するのではなく、より多くのアイデアを出していくことです。そして、大胆なアイデアほど、さらなるアイデアを誘発する可能性があることから、固定概念に縛られない柔軟な思考が求められます。斬新なアイデアが次々と生まれると、参加事業者の皆さんの表情も自然と笑顔に。画面を通じて、皆さんのワクワク感が伝わってきます。 

最後はこの日の総まとめともいえるプレゼンテーションの時間です。参加事業者の皆さんは、いくつか出たアイデアの中から絞り込んだアイデアをキャロルさんにプレゼンテーションしていきます。それを聞いたキャロルさんは、ものづくりの背景やサスティナビリティへの取り組みなども鑑みた上で、アイデアを検討し、実現に向けた問題点なども指摘してくれました。 

休憩も挟みつつも、7時間という長丁場で開催されたワークショップDay1。オンラインホワイトボード「Miro(ミロ)」を駆使しながら、意見を出し合い、思考を巡らせる濃密な時間でしたが、当初の目的であったオランダの方たちのニーズの整理と自社価値の再発見を見事クリアし、その自社価値をもとにしたアイデアも数多く生み出されました。 

次週のワークショップDay2では、キャロルさんとの協業のチャンスを獲得するための大事なプレゼンテーションが行われます。この日に導いたアイデアとキャロルさんからいただいたフィードバックをもとに、新たな可能性を模索し、実現に向けてキャロルさんとの協業の形や、オランダでの販売方法を考えていきます。果たして、どのようなサービスやプロダクトアイデアが誕生するのか。参加事業者の皆さんの挑戦はまだまだ続きます。