【家業後継者限定】ワークショップ 「激変する世界において、今、経営者が示すべきリーダーシップとは」 第一回イベントレポート

今や、戦後の高度経済成長がもたらした大量生産・大量消費の時代は終わり、個人の幸福を追求し、一人ひとりの価値観に合う商品やサービスの提供が求められる時代となりました。さらに、そこに追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大が生活様式や働き方にまで影響を及ぼし、あらゆる価値観を大きく揺るがす事態となっています。

まさに時代の過渡期といっても過言ではないこの状況の中、自身の信念や軸、心の核となるものが問われるものの、一人で掘り下げて言語化することはとても難しく、それゆえ、家業におけるイノベーションにもなかなか踏み出せないと嘆く家業後継者の声を耳にすることも多くあります。

そこで、家業イノベーション・ラボでは、これからの新時代を生き抜く後継者・経営者の皆さんが、新たな価値観やリーダーシップの本質を学ぶワークショップを全三回にわたって開催することになりました。講師は、エグゼクティブコーチとして、数多くの経営者支援や組織変革の支援などに実績を持つ、株式会社THINK AND DIALOGUEの代表・富岡洋平さんです。

2021年5月19日(水)に開催した第一回のワークショップでは、「自分自身のパーパス(生きる目的)を定義する」をテーマに、富岡さんと事業承継者の皆さんが双方向に「対話」をしながら、自身のパーパスを見つけるための「問い」について学びました。

パーパスは新たな時代を生き抜くための鍵

 第一回のワークショップのタイトルにもなっている「パーパス」とは、経営戦略やブランディングにおいて「ミッション」や「経営理念」「存在意義」を意味する言葉として用いられています。

では、なぜ今、このパーパスが注目されているのでしょうか。

それは時代の変化が大きく影響していると富岡さんは話します。冒頭で記したように、現代は情報やモノに溢れ、新たなテクノロジーが次々と台頭し、社会のあらゆるものが絶えまなく変化している時代です。企業の在り方もこれまでの株主価値第一主義ではなく、顧客に与える価値やサービスの内容、社員との関係性、地域支援や環境保護などの重要性が増し、社会との関わりの中で会社の目的や存在意義を明確にしていく必要性が世界的に求められています。それは企業や経営者だけの話ではありません。この社会で生きる私たち一人ひとりが「生きる目的」は何かと考え、話し合っていかなければ前進しない、それほど厳しい時代になったといえるのです。

しかし、その一方で、経営者や社員一人ひとりの「自分が本当に叶えたいこと」=パーパスが共鳴すれば、これまで以上に新たなイノベーションが生まれる可能性が高い時代でもあると、富岡さんはいいます。

 それでは、イノベーションを起こすための軸となるパーパスを明確にするために、私たちは何をしたらいいのでしょう。富岡さんが提示してくれたのは三つのキーワードでした。

一つは内発的動機を意味する「WANT」。これは私たちがもっとも心が動き、喜ぶ瞬間です。それこそが動機の源となり、前進するために必要なエネルギーとなります。

次は社会的責任を意味する「MUST」。これは私たちが解決すべき社会の課題、もしくは怒りや憤りです。富岡さん曰く、起業家の多くは「社会を変えたい」という怒りが原動力になっているといいます。

そして、最後が保有能力を意味する「CAN」。喜びの源であるWANTを実現し、怒りの源であるMUSTを解消していくためには、当然、力が必要です。実は、その力こそ、経験がもたらすものであり、だからこそ、富岡さんはこれまでの経験を振り返り、そこで何を学んだのかを言葉にすることが大事だと話しました。それは創業者や先代もできなかった、皆さんだからこそできる経営のヒントに繋がるはずだとも。

この三つのキーワードに対して、私たちはWHATとWHYを考えていきます。富岡さんは、そこで導き出された答えの中心にこそ、私たちが向かうべき人生の方向性、生きる目的、つまりパーパスがあるのだと教えてくれました。

 ただ、ここで気になるのは、家業後継者の皆さんの場合、創業者や先代らの経営理念は到底無視できるものではありません。しかし、富岡さんはまずは自身のパーパスを見つけることを最優先にしてよく、それらからは切り離して考えていけばいいと話します。そして、自身のパーパスが明確になったら、改めて、創業者や先代らの経営理念と掛け合わせていく。そうすることで、今の時代を生きる事業承継者の皆さんのオリジナリティのある経営理念へと進化していくと富岡さんはいいました。

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今回のワークショップは、終始、参加された皆さんと富岡さんとの「対話」で進められました。それは、富岡さんがワークショップの冒頭で話された意図もあったのかもしれません。私たちの頭の中はすべて問いから始まる、いわゆる、自問自答の繰り返しです。しかし、自問自答には自分のやりやすい、得意なパターンに固定してしまう傾向があり、それゆえ、新たな創造が生まれにくいというデメリットがあるといいます。だからこそ、富岡さんは他者と「対話」することが大事だとアドバイスを送ります。確かに「話す」「聞く」を繰り返すことによって、私たちは自身の考えを深め、定めていくことができます。それが効率よくイノベーションに近づく手段にもなるそうです。

6月16日(水)に開催予定の第二回では、「社員とともに、私たちのパーパス(経営理念)を定義する」と題して、今回、富岡さんから提示された「WANT」「MUST」「CAN」に対して、自身のWHATとWHYの答え“My Purpose”として言語化し、社員一人ひとりとの対話を通じて各社員の“your Purpose”と繋ぎ合わせ、経営する組織の“Our Purposeとして昇華させていく術を学んでいきます。