家業後継者たちの海外進出支援プログラム STEP3:「現地の空気感を掴む!オランダと繋いだスキルアップセッション」イベントレポート

2022年初めから始まった、家業後継者たちの海外進出支援プログラム。STEP1(1月26日開催)の基礎セミナー、STEP2(3月16日開催)のステップアップセミナーに続き、ついにSTEP3が実施されました。より実践的な学びを目的にしたSTEP3は、【全体編・DAY1】と【個別編・DAY2】に分けて開催。【全体編・DAY1】ではオランダでのビジネスをテーマにした「プレゼン講座」と現地と中継で繋いだ「LIVEオンライン視察」。そして【個別編・DAY2】では、エントリー選考を経た2社(東京都の米菓子「おこし」を製造販売する有限会社丸文製菓/大阪府のこんにゃく・ところてんを製造販売する中尾食品工業株式会社)を対象に、海外進出に向けた事業のメンタリングセッションが行われました。

オランダでの日本の認知度は高く、日本食は幅広く定着

2022年6月17日に開催された【全体編・DAY1】では、エントリーされた9社を対象に約120分のオープンセッションを行いました。ファシリテーターはSTEP1、STEP2に続き、海外リサーチやマーケティングを行う株式会社TNCの代表取締役社長・小祝誉士夫さんです。

前半のプレゼン講座では、オランダ政府観光局マーケティング部長のシャレル・ファンダムさんと、元オランダ観光局員で現在はビジネス進出サポートをしている株式会社MARKTの中川晴恵さんをお迎えして、オランダのビジネス環境や欧州進出におけるコミュニケーションの方法、プレゼンテーションスキルなどの重要事項をお話しいただきました。

まず、オランダでは日本の認知度は非常に高いとのこと。キッコーマンやヤクルトなど多くの日本企業が進出していて、日本食も人気。アムステルダムだけで日本食レストランは165 軒もあるそうです。大手スーパー「アルバートハイン」のレシピサイトには、151点もの日本食レシピが掲載されていて、注目度の高さが伺えます。中には「日本食?」というものも混ざっていて、中川さん曰く「オランダ人の物事に捉われない自由な発想が見て取れる」そうです。

オランダ人の心を掴む「ストーリー」、伝統継承や職人技もサステナビリティの一環に

デジタル先進国のオランダでは、キャッシュレス決済やビジネスシーンでのSNS利用はとても進んでいます。オランダで事業展開するには、デジタルツールの活用は外せません。

マーケティングやPR活動には英文ウェブサイトが必須です。ウェブデザインは「ビジュアルを大きく使う」「短いビデオを挿入」「テキストは短く」が3原則で、最近は動画の活用が顕著とのこと。トップページの一番上に動画を差し込み、企業や商品のストーリー性を強調するのが人気のスタイルだそうです。

また、オランダ人への訴求は「ストーリー」がポイント。プロダクトが生まれた経緯や歴史的背景、そして代々受け継がれる伝統や職人技にも非常に価値を感じているといいます。「地産地消」「リサイクル素材」など、サステナビリティの文脈で語られるストーリーも多い中、「職人技を継承していくこと」も社会的貢献と捉えられているとのこと。伝統の継承がサステナビリティの一環にあることは、日本の家業後継者にとっては追い風となるのではないでしょうか。

「ベジ&ビーガン」「地産地消」がキーワード。有機素材の循環型プロダクトも

オランダと中継で繋いだ「LIVEオンライン視察」では、STEP2でご登壇いただいた現地在住のライター&フォトグラファー・ユイキヨミさんが再び登場です。ユイさん制作のアムステルダムの紹介動画、世界最大級の園芸エキスポ「フロリアード2022」の紹介動画、そして、会場からの中継という流れで進みました。

画面越しからは、現地の自由でいきいきとした空気感が伝わってきます。ここでは今のオランダのトレンドを知る、重要なキーワードがいくつも出てきました。

①ベジタリアン&ビーガンと「地産地消」

大手スーパー「アルバートハイン」では、ビーガンやベジタリアンのコーナーが拡大中。市内には専門レストランも急増していて、ベジ&ビーガンは中華や和食と並ぶ、一般的なグルメカテゴリーとして認知されているそうです。

また最近では、アムステルダムの街中に、ローカルプロダクトだけを取り揃えたショップやスーパーも登場しているそうです。

その一方で、ヘルシー系の宅配ミールキットも人気で、特に若い働く世代に支持されています。新しい外国料理のレシピも紹介されていて、ユイさんは、「家でリーズナブルに試せるミールキットは、外国料理が浸透していくきっかけになるのでは」といいます。

②有機素材を使ったサーキュラーなプロダクト

「成長する緑の都市」がテーマの「フロリアード2022」では、持続可能な未来のための具体的な提案が数多く見られました。中でもオランダ館では、海藻や菌からつくられた家具や食器、廃棄マンゴーからつくられたレザーなど、循環型のプロダクトが目立ちました。ヘンプのコート地にきのこの菌糸を植え付けた毛皮風コートという、ユニークな作品も。サーキュラーな有機素材・都市廃材をいかに活用していくかというのが、多くのクリエイターの関心事項だそうです。

ちなみにユイさんによると「オランダ人は海藻を食べない」とのこと。海藻を食と思うのは日本人だからであって、彼らから見たら「簡単に水中で育てられるもの」だそうです。これを踏まえて小祝さんは「日本人が固定観念的に思っていることと、海外の視点は違う」と改めて強調。そして家業後継者の皆さんたちに、「海外にいろんなヒントを探してほしい。そして海外の市場に一歩踏み出してほしい」と背中を押しました。

現地目線を意識した商品開発。ローカルパートナーとの協業も視野に

【個別編・DAY2】のメンタリングセッションは、2022年6月22日・24日の2日間(各90分)に分けて実施されました。「オランダをゲートウェイに欧州進出を掴む!」をコンセプトに、株式会社TNCの小祝さんと副社長の木下朋さんが、2社の事業内容に合わせて海外進出のメンタリングを行いました。

個別セッションの前に、「世界の食潮流2022」と題したレクチャ―が行われました。今、食の世界にはどんな風が吹いているのか。12のキーワードから、両社に関連深い「プラントベース」「食スタイルの多様化」「ウェルビーイング2.0」「マインドフルネス」について、事例とともに解説。この中で最も重要なのは、「プラントベース」です。単に植物性というだけではなく、環境保護や動物愛護、サステナビリティといった文脈も強く反映されているのが特徴で、欧州市場では無視することのできない潮流だそうです。

個別セッションは、①欧州市場の把握、②事業内容と欧州市場との親和性を探る、③欧州市場に向けたコミュニケーション戦略、といったテーマに沿って対話型で進められました。以下では、特に印象的だった部分を抜粋してお伝えします。

●有限会社丸文製菓(三代目・細谷誠さん)

「オランダ向けの商品開発をしたい」と細谷さん。木下さんは、様々な機能性を追加できるおこしの可能性に触れながら、「ベジ・ビーガン向けの栄養補助食品」を提案します。限定的なビーガン食を実践する「フレキシタリアン」が増えていて、栄養補助をするサプリやバーなどが人気を博しているそうです。日本の価値観にとらわれず、現地のトレンドや食べ方に即した商品が求められます。

「歴史や文化をどう見せるか」が重要だという小祝さんに対し、細谷さんは「実はおこしは日本最古の和菓子」と発言。おこしの起源は弥生時代で、五穀豊穣を願う神様へのお供えものであったといいます。「伝統」がサステナビリティに繋がるといったDAY1の内容を振り返りつつ、テーマとして大きな可能性を見出していました。

●中尾食品工業株式会社(四代目・中尾友彦さん)

終始、熱心に質問を重ねる中尾さん。こんにゃくの欧州展開にあたって「どういう方向性でいったらいいか」という質問に、小祝さんは「間違いなく現地目線」と答えます。その上で、オランダ人の食生活にどう切り込んでいくか。レストランのシェフたちに料理のパーツとして売り込んだり、サブスクとして新しい売り方を試してみたりと、様々な方法が考えられます。また、現地で主流となりつつある「地産地消」もクリアすべき課題です。そのためには「現地の人たちとの協業体制を作って、地産地消感をつくっては」と提案。ものづくりだけでなく、パッケージデザインやネーミング開発など幅広い分野でタッグを組むことが、道を開くきっかけになるのではないでしょうか。

今回のメンタリングを通して、お二人とも、日本人目線では気づけなかった自社製品の魅力やオランダをゲートウェイに欧州市場への可能性を感じることができたようです。

今回で3回目のSTEPを迎えた、家業後継者たちの海外進出支援プログラム。オランダという国、そして欧州市場の魅力を存分に感じた半年だったのではないでしょうか。家業イノベーション・ラボは、今後も日本の伝統を担う家業後継者たちの海外進出をサポートしていきます。