家業イノベーション・ラボ×JAPAN BRAND FESTIVAL 「ヨーロッパ市場に向けた循環可能な商品開発クラフトソン」 オンラインカンファレンス・成果報告会レポート

去る2022年3月4日(金)〜3月6日(日)の3日間、渋谷ヒカリエ「8/」にて開催された「JAPAN BRAND FESTIVAL 2022」。地域産業を牽引する団体や企業、個人らが集い、さまざまな垣根を超えて各々のチャレンジを発展させる、年に一度のカンファレンス&展示イベントです。このプログラムの一環として、3月4日(金)に家業イノベーション・ラボとJAPAN BRAND FESTIVALのコラボレーションによる「ヨーロッパ市場に向けた循環可能な商品開発クラフトソン」(以下、クラフトソン)の成果報告会が行われました。

クラフトソンに参加して再認識した“家業の強み”

クラフトソンは、2021年8月5日(木)のキックオフイベントを皮切りに、8月14日(土)、15日(日)の2日間にわたってアイディエーションワークショップを開催しました。この短期集中型プログラムに参加したのは、富山県高岡市の有限会社モメンタムファクトリー・Orii、岐阜県瑞浪市の合同会社プロトビ・TILE made、富山県南砺市の株式会社松井機業、福岡県朝倉市の株式会社徳田畳襖店の4事業者の皆さんです。日本ではまだなじみの薄いサーキュラーエコノミーの知識を深めつつ、デザイン思考をベースにユーザーニーズを掘り起こし、ヨーロッパ市場を見据えた商品開発のアイデアを導き出していきました。そして、最終的にアイデアを一つに絞り込み、再度、ユーザーニーズに合う提供価値を言語化し、商品の基本仕様から設計まで落とし込んでいきました。

今回の成果報告会では、アドバイザーとして参加していただいたオランダを拠点とするデザイン会社「BCXSY」のデザイナーの山本紗弥加さんと、松井機業の松井紀子さん・渉さんご夫妻、プロトビ・TILE madeの玉川幸枝さん、モメンタムファクトリー・Oriiの堀内茉莉乃さんがオンライン上に集まりました。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 274097838_378584090396082_2267803925549302240_n-1024x535.jpg

まず、今回のクラフトソンのマッチング選考を経て、「BCXSY」との協業の機会を得た松井さんご夫妻が成果とクラフトソンに参加した感想を報告しました。

「クラフトソンに参加したことで、今一度、自社の強みや大切にしてきたことを話し合い、会社の理念や存在意義について考えることができました。私たちの強みは、しけ絹を用いて光を表現する技術に優れていることであり、この表現はほかではできないという考えに至り、今回の会場内のインスタレーションにつながりました。今後は、この素材や技術を用いて、照明や空間演出に力を入れていきたいと思います」

続いて、「BCXSY」の山本さんも感想を述べました。

「松井機業と話をしていくなかで、しけ絹と光がポイントだと思いました。後ろからライトを当てるとしけ絹のイレギュラーな模様がライトアップされて、繭という生き物からつながる織物であることが実感できます。それを多くの方に知ってもらいたいという思いが、今回のインスタレーションのアイデアにつながりました。また別件にはなるのですが、クラフトソンに参加されたプロトビ・TILE madeの玉川さんにアメリカの展示会『デザインマイアミ』のノベルティグッズの製作を相談しました。タイトな納期にも関わらず、タイル型の小皿を作ってもらったのですが、こちらが指示できていなかった細部まで丁寧に仕上げてくれました。こういった心配りはオランダではあまり経験したことがありません」

その玉川さんが代表を務めるプロトビ・TILE madeとモメンタムファクトリー・Oriiとの間でも、第3のコラボレーションが進行しています。両社に共通するのは、昔ながらの伝統技術を用いて唯一無二の色を実現する、着色が事業の主体だということ。玉川さんと堀内さんはお互いの事業に興味を持ち、両社にとって印象的な「青」をテーマに、伝統的な釉薬の青と金属着色の青が織り成す、新たな素材の探求を行っています。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 274825912_647179756538585_3704765952835719370_n-1024x553.jpg

外部の視点が入ることで面白い化学反応が生まれる

今回のクラフトソンの始動のきっかけとなったのは、家業イノベーション・ラボを共催するNPO法人農家のこせがれネットワークの代表理事・宮治勇輔さんが発した「伝統産業やものづくりは家業の宝庫」という一言でした。

家業イノベーション・ラボとしても初の試みではありましたが、参加された家業後継者の皆さんと伴走していくなか、改めて、外部デザイナーとの協業の楽しさや面白さ、そして難しさを感じました。第3者とコラボレーションすることに戸惑いや億劫さもあると思いますが、外から見ないと分からない視点に気づくことができたり、それを上手に取り入れることで想定外の化学反応が生まれ、面白い結果をもたらすことも多くあります。

今回、参加された4事業者の皆さんも、同じような志をもった家業後継者やデザイナーを始め、JAPAN BRANDの発展を支援するプロフェッショナルの方たちと意見を交わし、アドバイスに耳を傾けたことで、多くの気づきが生まれたと感想を述べてくれました。

2022年のクラフトソンは5月ごろに始動予定です。伝統技術や職人技を活かしたイノベーションに興味のある方は、ぜひ、このプラグラムに参加してみてください。

クラフトソンプログラムについては、こちらをご覧ください!