家業イノベーション・ラボ × JAPAN BRAND FESTIVAL  欧州進出支援プログラム 「Craft Runways 2022」 キックオフイベントレポート 

昨年、家業イノベーション・ラボでは、日本の優れた伝統技術と海外のクリエイティブを融合し、新たな商品開発と海外販路開拓を支援する短期集中型プロジェクトを始動しました。初めての試みにも関わらず、多くの家業後継者が関心を寄せ、また参加した4社の皆さんからも家業の強みを見直すいい機会になったと感想をいただきました。 

2022年は、プロジェクト名を「Craft Runways 2022」と改め、さらに一歩踏み込んだ取り組みとするべく、7月20日にキックオフイベントを開催しました。 

欧州進出に向けたプロジェクト第2弾がスタート 

昨年に引き続き、本プロジェクトは日本の伝統工芸やものづくりに携わる後継者の皆さんが、海外デザイナーや現地生活者の視点を介し、自社の提供価値を”再発明“(=再定義)することで、海外展開における立脚点となることを目的としています。参加事業者の皆さんをサポートするのは、ジャパンブランドを愛する人たちが集う場所を提供している「JAPAN BRAND FESTIVAL」と、オランダを拠点に日本のクラフトやデザイン性の高いプロダクトに特化した展示・即売会を運営する「MONO JAPAN」で、ともに日本のものづくりを熟知した両団体が的確に本プロジェクトをナビゲートしていきます。 

そして、今回、参加事業者の皆さんが目指す市場はオランダです。オランダはデザイン先進国であると同時に、欧州市場のゲートウェイという機能を持ち合わせており、世界の名だたる企業がオランダを拠点にビジネスを展開しています。 

今年も、キックオフイベントでは「MONO JAPAN」のファウンダーであり、ディレクターである中條永味子さんに、海外販路開拓に向けたレクチャーとともに、現在のオランダ市場や消費者ニーズについて解説していただきました。 

コロナ禍で海外との往来がなかなかできない今、中條さんが語る現地の情報はかなり貴重です。昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オランダをはじめ、ヨーロッパ各国でオンラインショッピングが増加しました。しかし、あれから1年が経ち、オランダの状況もかなり変わってきたといいます。 

「今は、新型コロナウイルスの規制も解け、旅行もイベントの開催も可能となり、これまで順調だったオンラインサイトの売上が軒並み下がっているといいます。ただ、その中でも外食や日用品といった分野ではオンラインショッピングが習慣化しています。さらに、ヨーロッパの人たちはサスティナビリティやSDGsへの関心が高く、この機会に商品の価値を見直そうとする動きが見られるので、今後は、より一層、簡単に物を買わず、長く使い続けられる商品を選ぶ人が増えていくと思います」 

難しい時代だからこそ、挑戦する価値がある 

このような時代の潮流を受け、何をどう売っていくか。ものづくり携わる人たちにとって大きな局面を迎えた今、中條さんは「すごく面白い時代に突入してきた」と話しました。 

なぜなら、オランダをはじめ、ヨーロッパの消費者が賢くなればなるほど、日本の優れた伝統技術や知恵を駆使した商品が受け入れられる可能性は広がります。現にオランダでは、日本の天然素材を用いた商品やシンプルなデザインの評価は高く、広く浸透してきているそうです。ただし、そのためには英語のコミュニケーションは不可欠であり、洗練された写真やカタログで商品やものづくりに込めた想いをしっかりと伝えることが大事だと中條さんはいいます。 

「今、とりわけ、注目されているのが日本の食文化です。コロナでなかなか日本に行けないことも後押ししていると思いますが、日本食のレストランも増えてきましたし、クオリティの高い日本の食材を購入する方もたくさんいます。ほかにも、テーブルウェアや調理器具などは需要があるかもしれません」 

そんな中、中條さんがバイヤーとして注目しているのが「漆器」です。漆は日本特有の天然素材であり、かつ、ヨーロッパの人たちが抱く「日本らしさ」や「美しさ」を体現しています。今後、漆の効能などもしっかり伝えていけば、ヨーロッパの人たちに受け入れられる可能性があるといいました。 

最後に、中條さんは海外販路の開拓のためには外に目を向け、経験を積むことが大事だと話しました。また現地に信頼できるパートナーがいると心強いとも。 

「家業を継続的に未来へと続けていくために、伝統工芸の技術や素材を見直し、現代の暮らしにどのように貢献できるか、新たな価値を再構築していくことも大切だと思います。モノジャパンは伝統的な物を伝える機会を作りたいし、皆さんと現状をシェアしながら、皆さん自身の可能性を広げるアイデアの掘り起こしに活用していただけたらいいなと思います」 

 

新たな視点が加わることでものづくりの未来が変わる 

この日のキックオフイベントでは、協業デザイナーであるデザイナーのキャロル・バーイングスさんも急遽参加してくださいました。 

キャロルさんは、アムステルダムを拠点とするスタジオ「Scholten & Baijings」の共同設立者で、ヨーロッパで最も刺激的で革新的、かつダイナミックなデザイナーの一人として知られています。手掛ける作品は、陶器、ガラス、テキスタイル、家具、電子機器と幅広く、数多くの有名ブランドとパートナーシップを結び、ラグジュアリー層に向けたデザインも得意としています。日本でも「カリモク・ニュースタンダード」や陶磁器ブランド「1616  ARITA JAPAN」などの実績があります。 

中條さんも「キャロルは日本のことも日本人のメンタリティも十分に理解した上で、新たな視点で的確なアドバイスをしてくれる最強のパートナーとなるはず」と、今回のプロジェクトの成果に期待しています。 

キャロルさんもまた今回のプロジェクトを楽しみにしてくれているようで、キックオフイベントでは温かいメッセージを送ってくれました。 

「私がまず伝えたいのは、日本の皆さんの作っている物はとても素晴らしいということです。私は2008年ごろから日本の企業や自治体とプロジェクトを行ってきましたが、そこで大事にしてきたのは対話です。皆さんとの対話を通して、何をしたいのか、何を達成したいのかを理解するように努めます。もしかしたら、それが私の世界中のコネクションとつながり、新たなコラボレーションに発展する可能性もあります。だから、まずは皆さんのことをよく知ることがすごく大事だと思っています」 

多くの気づきがアイデアの種となる 

今後、本プログラムはオランダ生活者へのオンラインヒアリングや、2日間にわたるオンラインワークショップ、デザイナーとの協業一社選出へと続きます。その過程では多くの気づきがあり、自社の強みを活かした価値提供のためのアイデアの種が見つかることでしょう。家業の宝庫といっても過言ではない、伝統工芸やものづくりに携わる方にとって、大いに参考にしていただけるプロジェクトとなっていますので、今後の展開にご期待ください。