家業イノベーション・ラボ × JAPAN BRAND FESTIVAL 欧州進出支援プログラム 「Craft Runways 2022」 ワークショップDay2レポート

伝統産業・工芸・ものづくりに携わる家業後継者の方を対象に実施する「Craft Runways2022」は、自社の強みを再発見し、海外販路拡大に向けた商品開発をサポートするプログラムです。オンラインワークショップDay1の開催から1週間後の8月27日、本プロジェクトに参加する張り箱専門店を営む「株式会社野村紙器」、木彫彫刻の製造を行う「株式会社木彫前田工房」、人形製造や「人形屋ホンポ」を運営する「株式会社成島」の家業後継者の皆さんが再び集結し、オンラインワークショップDay2を開催しました。

実践さながらのプロセスでアイデアを発展

前回同様、参加事業者の皆さんは本プログラムを支援する「JAPAN BRAND FESTIVAL」と家業イノベーション・ラボのスタッフらとグループに分かれ、まずはDay1を振り返りました。そして、Day1の最後に協業デザイナーのキャロル・バーイングスさんが寄せたフィードバッグをもとに、さらにアイデアをブラッシュアップさせていきます。注意すべきポイントは、前回のアイデアをただ更新するのではなく、新たな可能性も同時に探っていくことです。そのためには各自が忌憚なく意見や疑問を出し合う必要があります。それができてこそ、初めて実現に向けたアイデアが広がっていくのです。このプロセスは、今後、皆さんが事業を進めていく上でも貴重な経験となるでしょう。

アイデアの再構築が終わると、キャロルさんも加わってそれぞれのアイデアの問題点を洗い出していきます。2日間のワークショップでは、数回にわたってプレゼンとフィードバッグが行われますが、これを繰り返すことでアイデアの咀嚼はもちろん、新たな気づきへと派生する可能性も秘めています。

続いて、実際にキャロルさんとの協業方法や、ターゲットとなるオランダ市場での展開や流通についても考えていきました。ここまでくると実際の商品開発と何ら変わらず、むしろ短時間で答えを導いていかなくてはならないので難易度はかなり高いといえます。参加事業者の皆さんからも「難しい」という言葉が聞こえてきました。

このような実践さながらのプロセスを辿るのには理由があります。この日の最後に、キャロルさんをはじめ、「株式会社Culture Generation Japan」の代表・堀田卓哉さんや、「株式会社箔一」のブランドディレクターを務める鶴本晶子さんに、それぞれのアイデアをプレゼンする時間が設けられているからです。このプレゼンがキャロルさんとの協業の選定につながる大事なワークとなるので、皆さんもDay1以上に力が入ります。

有識者をワクワクさせるアイデアの数々

Day2も後半に入り、ついに最終プログラムであるプレゼンの時間になりました。

「野村紙器」が出したアイデアは大きく2つ。どちらも貼り箱製造を長く続けてきた同社ならではの素晴らしいアイデアです。ただし、日本よりも価格帯が上がってしまうことを考えると、それに見合う捻りがもう少し欲しいと意見が寄せられました。堀田さんは、国内の石鹸ブランドを例に掲げ、キャロルさん主導のもと、オランダの若手デザイナーとコラボしたアートボックスコレクションなども面白いのでは?とアイデアを提案してくれました。

「木彫前田工房」からは、工芸品に興味のある30代~40代の女性をターゲットに、だんじり彫刻の美しさや繊細さを日用品に落とし込むアイデアが発表されました。その中の一つのテーブルマットは、同社のクラフト感を残しつつ、+αの価値をもたらすものとして高く評価されました。ただ、「木彫前田工房」が本来伝えたいのは、だんじり彫刻という伝統工芸です。そこで、キャロルさんの視点を通して、だんじり彫刻の迫力を表現する方法を模索していくことも面白いと期待が寄せられました。

最後に発表した「成島」は3つのアイデアを披露しました。1つは前回のワークショップで発表したアイデアとは全く異なるもので、同社が多数保有している織物の図案をスイーツにプリントするというものでした。さらに、キャロルさんのフィードバッグをもとに、ブランドとコラボしたガチャガチャの提案やこいのぼりの新たな展開案も飛び出しました。スイーツは、欧州だけではなく、アジア圏での展開も示唆され、またガチャガチャもコラボ先次第ではユニークな取り組みになる可能性があると高い評価を受けました。

キャロルさんをはじめ、堀田さんや鶴本さんは、どのアイデアも非常にワクワクするものであり、可能性を感じたと総評を述べました。また、この短期間に多くのアイデアを出したことが素晴らしいと参加事業者の皆さんを称えました。

伝統工芸の技術を守りつつ、海外展開を視野に挑戦は続く

2日間にわたるオンラインワークショップは、想像以上に内容の濃いものとなりました。今後、この中から1社が選ばれ、キャロルさんとの協業が始まります。ワークショップで出されたアイデアをさらに深掘りし、最終的には来年1月開催予定のローカルアドバイザー「MONO JAPAN」のオンライン受注会「MONO MONTHLY」の出展や、2023年3月開催予定の「JAPAN BRAND FESTIVAL」の出展が控えています。

今回、参加事業者の皆さんは、自社の価値を見直し、海外販路開拓という大きなチャレンジに挑みましたが、今回のアイデアを机上の空論で終わらせることなく、形にしていくことが大事です。それが今後の家業にきっと役立っていくでしょう。そして、今回の「Craft Runways2022」をきっかけに、これからも海外展開を視野に入れた挑戦を続けてほしいと思います。