〈家業イノベーション・クエスト2018二日目〉先輩イノベーターから学んだこと

2日目は、ゲストの講演を聞き、学びを深めた後、2日間の学びの成果をプレゼンテーションにまとめ、発表しました。

マーケティングストラテジストの阿座上陽平氏。株式会社BAKE成功の立役者であり、イノベーションのスペシャリストです。

事業者の「why とわくわく」つまり「なぜその事業を行っているのか」「どんなことに熱意を持っているのか」ということを発信して、客に「共感と期待」を持たせ続けることが事業を成功させるカギの一つだと話しました。

阿座上氏が言う事業の現在と過去、さらに未来のビジョン、利用できる技術、顧客として獲得したいターゲット、競合事業と世論の中のポジショニング、といったものを分析し、事業をデザインする手法は、参加者が具体的に事業計画を考えるヒントとなったようです。その他、「おいしさの3原則=手間、材料、フレッシュ」、「8割主義=8割に好まれる商品を作る」、「ファンを巻き込んだ情報拡散」などのビジネスのヒントに参加者は、深くうなずいていました。

最後に阿座上氏から、これから家業を継ぐであろう参加者に向けてアドバイスがありました。家業の中ですでに出来上がっている関係性に対して影響力を持つためには、外に会社をつくる、または、内部にいい仲間を持つ、というアプローチが効果的だということでした。

2日間、先輩家業イノベーターの話を聞き、悩みを共有する仲間と飾ることなく本音で話し合ってきた参加者。プレゼンテーションには、学びの成果が表れていました。

現在マーケティングリサーチ会社に勤務し、間もなく実家の漫画広告会社を継ぐことの決まっている男性参加者は、これまで仕事にかける情熱が少ないことに悩んでいました。しかし、今回のセミナーを通し、「漫画を情報収集媒体の選択肢にする」というビジョンに行き着きました。理由として、現体系の家業をそのまま継ぐことに違和感を持ち続けていた中、2日間を通じて同じ境遇の仲間や家業イノベーターからの刺激を受け、パッションを感じながらビジネスを成長させることこそ、大切と気付いたそうです。そこから考えを突き詰め、まずは家業の現状を分析し、そして理解することから始める決意を固めたことを語ってくれました。

213年もの歴史を持つ和菓子屋が家業の大学2年生の参加者は、初め、父を超えたいと話していました。この合宿を経て具体的なビジョンが見えてきたようです。伝統文化である和菓子を守り、発酵食品であるくずもちの「健康食品」という特徴を海外にも発信して行きたいと話しました。まずは、大学で知識を深め、卒業後まず就職してブランディング・プロデュース能力を身に着けたいといいます。

刺激を受けるためこのイベントに参加したという高校3年生の学生は、熱量を保てるよう、「好き」を突き詰める、というビジョンを掲げました。「両親の価値観はイノベーションの天敵だと学んだので、一人暮らしをし、親との付き合い方を見直し、積極性を育てる機会にしたい」と意気込みました。

創業116年目の味噌醤油屋が家業の大学1年生の参加者は、初め、家業を継ぐ使命感だけが先走り、ビジョンが持てないと悩んでいましたが、2日間の学びを経て答えが出たようです。「家業や商品について詳しく知ることで、使命感を愛着に変える」と話しました。「家業を持つ者特有の悩みがあること、それを共有できる仲間がいることを知り、その解決方法を先輩家業イノベーターに学ぶことができた。大学生という身分を有効に活用し、学生の間に探求を進めるべきことも随分と明らかになれた」と、今回のイベントでの学びに満足感を表明しました。

イベントを終えた参加者の一人に感想を伺いました。実家が和菓子屋さんの大学生は、同じバックグラウンドを持つ人たちと話し合い濃密な時間を過ごしたことで、刺激を受けたといいます。

「今までは、父親の大きな存在を超えなければとプレッシャーを感じていたが、父親の存在を土台に自分なりに上を目指せばいいと、ビジョンが明確化した」と、今回のイベントに参加して大きな収穫があったと話しました。

また、「長い間続いている家業には、お客さまが支え続けてくれている理由が必ずある」ということも、企業訪問で先輩イノベーターの話を聞く中で再確認したそうです。家業の存在意義を確認、明確化して、社会に還元する決意を語りました。よりスピード感をもって事業を進め、テクノロジーを利用して時代に合った最先端の事業を展開するというビジョンを具体化したいと意気込みました。