家業イノベーション・ラボ × JAPAN BRAND FESTIVAL ヨーロッパ市場に向けた循環可能な商品開発クラフトソン アイディエーションワークショップ Day1 レポート

今、欧米を中心に広がりをみせるサーキュラーエコノミーは、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄のビジネスモデルから脱却し、無駄な物を無くし、資源を循環させて地球環境の負荷軽減につなげる経済活動です。家業イノベーション・ラボは、このサーキュラーエコノミーをテーマに、国内でものづくりに携わる4社の商品開発や海外販路開拓を支援する短期集中型プロジェクト「ヨーロッパ市場に向けた循環可能な商品開発クラフトソン」(以下、クラフトソン)をスタートしました。このプロジェクトは、日本発のプロダクトやサービスの発展を支援するJAPAN BRAND FESTIVALとのコラボレーションによるもので、サスティナビリティへの取り組みが盛んなヨーロッパ市場を念頭に進めていきます。 今回のプロジェクトに参加する4社は、富山県高岡市の有限会社モメンタムファクトリー・Orii、岐阜県瑞浪市の合同会社プロトビ、富山県南砺市の株式会社松井機業、福岡県朝倉市の徳田畳襖店の皆さんです。2021年8月5日に開催したキックオフイベントでは、皆さんから「自社の技術を用いて、新たな可能性を探りたい」と意欲が語られました。

まずはサーキュラーエコノミーへの理解を深める

キックオフイベントから9日が経過した8月14日、プロジェクトに参加する4社の皆さんとファシリテーターを務めるJAPAN BRAND FESTIVAL運営メンバーや家業イノベーション・ラボ実行委員らがオンライン上に集い、ワークショップDay1が開催されました。 実は、この日までに参加メンバーには事前課題が与えられていました。一つは、今回のテーマであるサーキュラーエコノミーに関する取り組み事例をリサーチすることです。取り上げる事例は、自社の事業との関連は問わず、個人として興味のある分野でもかまいません。ただし、その取り組みが何を対象にしているのか、また取り上げた理由と感想を自分なりに考察することが求められました。
実際に参加メンバーから発表された事例を見ていくと、国や地域はもちろん、業界や業界も異なるさまざまな取り組みが上げられていました。その多くは既存の事業や物の見方を少し変えるだけ、もしくは知恵を絞ることで、持続可能な経済活動が可能であることを示しているものばかりでした。参加メンバーたちからは「これまでサーキュラーエコノミーについてあまり考えてこなかったが、調べていく中で勉強になった」「自分たちに近い取り組みから調べていくことで、頭の整理ができた」「サーキュラーエコノミーは経済と持続可能の融合なんだと理解することができた」といった感想が寄せられました。この事前課題の目的である、サーキュラーエコノミーに対する認識を深めることはもちろん、各自の視野を広げることにも大いに役立ったようです。

参加者の実際のリサーチ事例

そして、もう一つ、事前課題として出されたのは、自社のものづくりに関するユーザーのニーズを探ることでした。この課題は、この日のワークショップのプログラムにつながるもので、各自で特定のユーザーを抽出し、そのユーザーの問題を分析して気づきを深掘りしていきました。作り手の視点から行う商品開発ではなく、使い手の立場になってユーザーが持つ問題の抽出と理解を通じてインサイトを発見する機会にもなりました。 午後のワークショップでは、ユーザーの問題を解決するためのアイデア出しに取り掛かりました。問題解決の方向性を導出するための「我々はどうすれば、〇〇できるのか?」(How Might We)という問いを立てて、各自でアイデアを出していきます。このアイデア出しは、ワークショップDay1の最後に行うプレゼンテーションの素地となる大事な作業となるので、参加メンバーは知恵を絞り、捻り出したアイデアはスケッチなどで表現していきました。

現地デザイナーが指摘する、海外販路開拓の課題

そのアイデアに基づいて行われた最後のプレゼンテーションでは、オランダを拠点とするデザイン会社「BCXSY」のデザイナーのボアズ・コーヘンさんと山本紗弥加さんが視聴し、それぞれの問題点を的確に指摘していきました。

たとえば、ヨーロッパにすでにある素材やプロダクトを、わざわざ日本から輸入してまで欲しいと思わせる、+αの価値の提供が必要であること。それに加え、自社の技術の良さや商品の魅力を伝えるために、どのようにプロダクトに表現していくのか。また、もう少しヨーロッパの人たちのニーズを想定しながらブレインストーミングし、リストアップしていくことが必要であり、そのためにはヨーロッパで同じような商品があるのか、それはどのような商品なのかをリサーチすることが大切だとアドバイスを送りました。

本来、一つの商品の開発にはかなりの期間を要するものです。しかし、今回はアイデアを出すところから、具体的な商品製造計画に落とし込むところまでのプログラムが盛り込まれた2日間の集中ワークショップ。しかも、想定するユーザーは日本人ではなく、ヨーロッパで暮らす人たちです。ヨーロッパの人々に受けるような商品を開発するには、彼らがどんな物を欲しているのか、どんな物に興味があるのか、まず市場のリアルを知らなければ話になりません。ボアズさんがフィードバックしてくれたことは、各自のプロジェクトの弱点を確実に指摘する厳しいものでしたが、それは参加メンバーたちの中に新たな気づきを与えてくれました。 今回のプロジェクトは、ただやみくもに新商品を考えるのではなく、前提となる多くのプロセスをワークショップで行い、本当に求められる物を導き出すことが最終目標です。翌日に控えたワークショップDay2では、ボアズさんの指摘した課題にどう向き合い、解決への道を探るのか、4社のさらなる意欲が試される1日になることでしょう。