【家業後継者限定】ワークショップ 「激変する世界において、今、経営者が示すべきリーダーシップとは」 第二回イベントレポート

2021年5月に第一回が開催されたワークショップ「激変する世界において、今、経営者が示すべきリーダーシップとは」は、時代の過渡期といっても過言ではない現在において、家業後継者たちが新たな価値観やリーダーシップの本質を学ぶ場として実現しました。去る6月16日に開催された第二回は、第一回の課題である「Myミッションステートメント」を各自が発表することからスタートしました。

My Purposeは未来を描くために必要なもの

第一回では、エグゼクティブコーチとして、これまで数多くの経営者支援や組織改革の支援を行ってきた富岡さんの講義のもと、激動の時代を生き抜くために必要となる会社のパーパス(ミッション、経営理念、存在意義)の重要性と、経営者自身のパーパスの見つけ方法を学びました。

パーパスを見つけるためには、重要な三つのキーワードがあります。一つは内発的動機を意味する「WANT」、次は社会的責任を意味する「MUST」、そして、最後は保有能力を意味する「CAN」です。参加した家業後継者の皆さんは、自身のこれまでを振り返り、この三つのキーワードから連想したことを言語化し、さらにそれらに対してWHAT、WHYをそれぞれ考えることが課せられました。

 第二回は、冒頭からブレイクアウトルームが開催され、各自が導き出したパーパスを披露していきます。ある方は家業の取り組みと照らし合わせて自身のパーパスを語り、ある方は家業とはいったん切り離して個人としてのパーパスを語るなど、その内容は実にさまざまでした。皆さんが語ったパーパスは、これまで生きてきた人生の縮図であり、またこれから先、進むべき未来の道しるべといってもいいかもしれません。

しかし、このMYパーパスを導き出す作業はなかなか難しいものだったようです。確かに、日々仕事に追われていると、立ち止まって自分自身を振り返る時間なんて、そう容易に作れるものではありません。仮にできたとしても、それを言語化していくのは、かなりのテクニックを要します。現に第一回終了後、モデレーターを務める株式会社みやじ豚の代表取締役社長・宮治勇輔さんのもと、有志たちによる勉強会が開催されたことも明かされました。

約1カ月にわたり、自分自身と真摯に向き合った結果、皆さんが得たものは新たな発見であったり、気づきであったり。さらには自分が進むべき方向性のヒントであったり。この貴重な体験は皆さんに確かな自信をもたらしたようです。その証に、皆さんが発する言葉の一つひとつに、第一回とは明らかに異なる力強さが宿っていました。

これからの経営者に必要なのは言葉だと富岡さんはいいます。経営者の心の中にある熱い思いを言葉にして語ることが、多くの人の心を動かすのだと。たとえ、それがきれいな言葉でまとめられていなくても、経営者自身の心が込められていれば、言霊となって誰かの心を揺さぶり、それが理念となって多くの人々に届くのです。

リーダーに求められる「話す力」と「聞く力」

そして、富岡さんが次に課したのは、聞き手としてのテクニックです。一人がパーパスを語り終えると、ほかの参加者たちが次々と質問を寄せていきますが、そこでどんな質問をするのかは聞き手のセンスが大きく影響します。その「聞く力」こそ、マネージメントの手法である1on1に通じる重要なスキルといえます。

会社はさまざまな価値観を持った人が集まる場です。だからこそ、それぞれのパーパスもまた多様です。リーダーのパーパスはもちろんのこと、社員一人ひとりのパーパス、さらにはチームのパーパスもあります。それらを共有することができたら、多様な働き方、異なる価値観を持つ人とも分かり合えるし、またつながり合えると富岡さんはいいます。それによって変わることのない会社の存在価値が生まれ、それをもとにビジョンが描かれていき、そのビジョンを実現するために行動指針であるバリューが作られていきます。会社はそこでようやく事業の戦略を練ることができるのです。富岡さんは、パーパス、ビジョン、バリューがないなか、事業計画(PDCA)だけを掲げていても、それはただ人を疲弊させるだけだと諭してくれました。

そして、最後に、真のダイバーシティな組織とは、互いの原体験や価値観、感情という「ヒトの領域」を共有し、尊重し合うからこそ、思考や行動という「コトの領域」における協働が可能なのだと教えてくれました。

今回の家業後継者の皆さんによる“Myパーパス”の言語化は、皆さんの自信に溢れた語り口からとても貴重な経験となったことがわかりました。実は、この試みはリーダーとしての第一段階に過ぎません。今回のように自分で自分をリードしていくことができたら、次は社員一人ひとりとの対話を通じて、各社員の“your パーパス”を導き出す。それがリーダーとしての第二段階です。そして、リーダーは最終的に対話を通じて「場」を動かす。この「場」において、リーダーが円滑に「問う」「促す」「褒める」「振る」「繋げる」を行えば、組織としての“Our パーパス”を作り出すことが可能となります。 約90分に及ぶワークショップでしたが、今回もあっという間に時間が過ぎていきました。もっと富岡さんの話を聞きたい、まだまだ話し足りないと感じる参加者の皆さんも多かったようですが、次回はついに最終回となります。第三回は、「ビジョンを実現するための1on1を体験する」をテーマに、今、話題の1対1で対話するマネージメント・スキルの基本を学んでいきます。