自分の「強み」を知ることが事業承継成功の鍵
体脂肪計・体組成計など健康計測機器において、今や売上世界一を誇る株式会社タニタ(以下、タニタ)。赤字が続く同社を世界一へと飛躍させたのは、ヘルスケアオンライン株式会社の代表・谷田昭吾さん(以下、谷田さん)の父である前経営者の谷田大輔氏です。
今回の「家業イノベーション・オンラインセミナー」では、父の背中に学び、最も身近でその経営学を習得した谷田さんに、事業承継における成功の鍵を語っていただきました。
2003年、タニタに入社した谷田さんは、営業部配属の後、父とともに新規事業の開発に携わります。そこで感じたのは「強み」の発見であり、「強み」の活用でした。
「創業者の祖父は2カ月に1度、息子たちを交えて家族会議をしていました。そこで語られたのは、それぞれの役割と強み。自身の強みを見つけ、その強みを上手に活用することを息子たちに伝えていたわけです。その後、経営を引き継いだ父は『強みを持たないと生き残れない』と考え、体重計に体脂肪計を付けた商品の開発を進めました。強みが生産性やレジリエンス(回復力)を向上させることは、ポジティブ心理学等の研究結果にも表れています」
「強み」とは常に高い成果を生み出す能力のこと。ポジティブ心理学のセリグマン博士はこれを『家』の土台に例えました。その家を支える柱は「ポジティブ感情」「エンゲージメント」「人間関係」「意義」「達成」の5本です。これらが生産性を上げる鍵となります。
では、自分の「強み」はどう見つけたらいいのか。まずは自分自身をよく観察すること。それでも見つからない場合は、周囲の人を巻き込むことだと谷田さんはいいます。そのために欠かせないのは「対話力」や「コミュニケーション力」です。
「対話やコミュニケーションは事業承継においても重要です。トップが変わると必然的に強みも変わってきます。新たな強みを生かすためには、まず周囲の人たちに理解してもらわなくてはなりません。また外部の方との対話も欠かせません。タニタの社員食堂もある意味外部の方との対話から生まれたと理解しています」
最後に谷田さんは事業承継への思いを語りました。
「事業承継は親や親せきの思いやしがらみもあり、本当に難しいと思います。だからこそ、その大変さを分かち合える仲間が必要です。本音で腹を割って話せる人を見つけ、一歩一歩進んでいくこと。そして、自分や会社の強みを見つけて、それが組織や未来を変える可能性があると信じて事業を進めてください」