課題を克服し、新たなビジネスチャンスを作る 家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン2020~
昨年8月、国内随一の科学技術拠点都市として知られる茨城県つくば市を舞台にスタートした『つくばのテックでつくる家業の未来 ~家業イノベーション・アイデアソン2019~』。約5カ月にわたって繰り広げられたこのアイデアソンでは、家業イノベーターとつくばのテクノロジー、そして、参加者たちの知見がさまざまな化学反応を巻き起こし、斬新かつユニークな取り組みを次々と生み出していきました。
そして、この夏、「アイデアソン2020」のオンライン開催が決定しました。つくばというリアルな場を共有できないことは残念ですが、その代わり、全国の人々が気軽に参加できるという、オンラインならではの良さを生かすことができます。
去る8月26日(水)には、茨城県つくば市を中心に公募などで選ばれた4名の家業イノベーターのお披露目を兼ねたキックオフ会が開催されました。遠く沖縄から参加する方もいて、昨年以上に多様なジャンル、年齢、経験を持つ方たちが興味深くアイデアソン2020に参加します。
それでは、ここからは初顔合わせとなったキックオフ会の模様とともに、4名の家業イノベーターたちが抱える課題をご紹介していきましょう。
4名の家業イノベーターたちの課題をブラッシュアップ
始めに、家業イノベーション・ラボを共催する「NPO法人農家のこせがれネットワーク」の主宰者・株式会社みやじ豚の宮治勇輔さんの基調講演が行われました。
宮治さんは、昨年の「アイデアソン2019」に家業イノベーターとして参加した一人です。当初は新規顧客の獲得を課題として掲げていましたが、回を重ねるうちに既存顧客の満足度を上げることが最優先だと認識し、現在は自社サイトやインベントサイトの構築に取り組んでいます。経験者である宮治さんは、この日、「既存のサービスを壊すのではなく、いかに活用するかが大事」であり、「成功の秘訣は『フォーカス』すること」だと話しました。宮治さんのこの言葉は、今後のアイデアソンで家業イノベーターたちの礎となって響いたことでしょう。
その後、ウェブ会議システムのブレイクアウトルームを利用し、いよいよ4名の家業イノベーターたちを交えたブラッシュアップセッションがスタートしました。
今回のアイデアソン2020に参加される家業イノベーターは、水戸市で印刷会社を営む「株式会社あけぼの印刷社」の山田周さん、日立市で70年余り続く老舗「御菓子司風月堂」の3代目・藤田浩一さん、そして、八千代町で豆腐を中心とした食品製造業を営む「有限会社高橋食品」の高橋真弘さんといった、地元・茨城で家業を継承した3人の経営者に加え、和歌山県有田川町で柑橘を生産している「みかんのみっちゃん農園」の小澤光範さんです。
60種類の柑橘類を年間100tも生産する小澤さんの目下の課題は、「BtoCの販路確立」、「規格外のみかんのフードロス問題」と「有田地域で人を集める仕組み作り」です。
現在はSNSを通じて消費者からの注文を受け付けているそうですが、その数も多くなった今、SNSに特化したECサイトの構築を始めています。そこでは、味は優良みかんと全く変わらないのに、規格外だというだけで市場に出せないみかんを販売していきたいと話しました。この課題に対して、同じ農業を営む立場である宮治さんのほか、参加者たちからはBtoBtoCへの可能性も指摘されるなど、短い時間にも関わらず、白熱した議論が交わされました。
小澤さんが抱えている課題は3つ。今後、どの課題を優先的に行っていくのかも重要なテーマです。
また、「株式会社あけぼの印刷社」の山田さんは「デジタルとアナログをブリッジしたサービスの構築」を目指し、今回のアイデアソン2020では「若年層に対してカーディーラーの販促を考える」をテーマに掲げました。
これは実際に山田さんに寄せられた相談事だったそうですが、車離れが進む若年層にデジタルとアナログをミックスさせた効果的なプロモーションを行うことは、確実に家業のアップデートにつながる取り組みです。また、今回のアイデアソン2020で、多くの人に自社設備を活用するアイデアも求めていると話しました。ディスカッションでは、ウェブやIT関係者による専門的なアドバイスやヒントが寄せられています。
デジタルが主流となった昨今、印刷会社として何ができるか。山田さんのチャレンジに期待が高まります。
藤田さんは「和菓子業界が抱える7つの課題」を説明しました。その中でも最も大きな課題は「後継者不足」。収益性のないビジネスモデルでは、後を継ごうと思う若者が出てきません。そこで、藤田さんは和菓子の伝統を未来へ残していくために、「収益性を伴うストーリー性のある代表的な看板商品」を作りたいと話しました。
その藤田さんの思いに対し、海外マーケティングを数多く手掛ける株式会社TNCの代表、小祝誉士夫さんからは「海外に向けて展開されている緑茶のプロモーションを参考にしてみては?」というアドバイスが。確かに緑茶と和菓子の相性は抜群です。そこから看板商品に向けてのヒントが見つかるかもしれません。そのほか、管理栄養士である参加者からは、「治療食」としての和菓子の可能性についてアイデアも寄せられました。
「和菓子」という日本の伝統文化を次世代へとつなぐことも、藤田さんに課せられた大切なテーマです。
高橋さんは、豆腐の原料にこだわる一方で、製造方法や配送ルートを見直し、人件費の削減や価格改定などを行い、ようやく利益が出始めたいま、新たな施策として「直販とEC販売の強化」を考えています。しかし、現在もスーパーなどの卸が95%を占めていること、さらにはEC販売に不可欠なSNSが全く手付かずの状態だと話しました。
そんな高橋さんに対して、健康志向が進む昨今、世界的にみても豆腐のポテンシャルは高いと参加者たちは諭し、その中でほかとは異なる施策が必要ではないかとアドバイスを送りました。その一つがオーダーメイドによる豆腐販売。これなら付加価値があるので、高価格帯での販売が可能になるかもしれないと、早くも現実的なアイデアが寄せられています。
ヘルシー志向の高まりを受けて、世界的に注目を集める「豆腐」。絶好の機会に高橋さんが仕掛ける一手とは?
家業のアップデートへとつながる新たな取り組みに期待も高まる
約2時間にわたって開催されたキックオフ会。その中で家業イノベーターたちの課題のブラッシュアップの時間は40分と限られていたにも関わらず、参加者たちの惜しみないアドバイスはもちろん、新たなアイデアも飛び交うなど、昨年以上の熱量が期待できる内容となりました。
今後、家業イノベーターたちの課題克服のために、参加者たちの経験や知恵がどんな化学反応を巻き起こすのか。さらには、それがどのように事業のアップデートへとつながるのか。今年度のアイデアソンも大いに期待が高まります。
『家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン2020~』の第1回は9月30日(水)に開催予定です。新たなビジネスが生まれるその瞬間を、ぜひ、皆さんご自身も一緒に体感してみてください。
『家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン2020~』
開催予定日
第1回 9/30(水) 19:00~21:00
第2回 10/28(水) 19:00~21:00
第3回 11/25(水) 19:00~21:00
https://kagyoinnovationideathon2020-1.peatix.com