家業イノベーション・セミナーvol1~湯主一條 一條社長

家業にイノベーションを起こした経営者をお招きし、直面した困難や苦労、どう乗り越えたのかの実例や工夫をお話頂く「家業イノベーション・セミナー」。第一弾は宮城県にある創業600年の老舗旅館「湯主一條」の20代目、一條一平氏にお話いただきました。

本セミナーは、これから家業を継ぐ若者や、家業を経営している経営者、家業を応援したい方に対して家業にイノベーションを起こすヒントを与えることを目的とし、今後も様々な経営者をお呼びして開催していく予定です。

先代から会社を継いだ時、会社の通帳にはたったの40万円しかありませんでした

先代の急逝から世代交代をした際に一條社長に降りかかったのは、大変な困難の連続でした。
売上の倍以上の借入金、目の前に迫る従業員への給与振り込み、にも関わらず会社の通帳にはわずかな金額しかない。何とかその状況を乗り越え、会社の再建に挑もうとした時に立ちはだかったのは、従業員の意識でした。昔ながらのやり方を変えようとしないスタッフ達は、お客様ごとに担当者を割り振り、その担当者以外はお客様へのお出迎えさえしない状態でした。

一條社長は、そんな会社を変えるべく、少しずつ改革を行っていきます。
自身がホテルの接客から学んだサービスの知識を従業員達に直接伝える、料理を一新し肉と魚をその場で選べるようにする、宴会場を改装してスイートルームにする、など、老舗旅館でありながら、時代に合った形のサービスを提供するように改善していきます。

その結果、客足は伸び、現在では鎌先温泉をけん引する存在として、いかに地域全体を良くしていくか、さらに未来を見据えた改革について考えているところである。というお話を頂きました。

その後は宮治さん、株式会社チエノワの田中社長を交え、パネルディスカッションを行いました。
宮治さんからは、家業を受け継ぐ際に、どのように覚悟を決めたのか?古参社員とどのようにうまく関係性を築いたのか?などの深い質問があり、それに対して一條社長からは具体的なエピソードを交えたここでしか聞けない深いお話を伺うことができました。

家業ピッチ&アイディアブレスト会

その後は3名の家業後継者の方から、家業ピッチと題して、現在の事業、これから変えていきたいと思っていること、どんなサポートが欲しいか、といった内容をプレゼンテーション頂きました。

一人目は「大平農園・おーべーファーム」の大平 成晴さん。
町の中に畑があることが地域の財産となるように、都市農業の可能性を追求し、存在意義を示したい。そのためにどんなチャレンジが出来るか?といったお話を頂きました。

お二人目、発砲スチロールの加工を営んでいる、「第一フォーム株式会社」代表取締役の澁谷 正明さんからは、モノづくりの中小企業がもっと大学生から注目され、就職先として視野に入るようにするにはどうすればよいか?という問題提起がありました。

3人目の「株式会社共仕販 常務取締役」奥田 浩之さんからは、現在牛乳の配達業を行っている自社の配達機能や既存顧客を活かし、どんな新規ビジネスが考えられるか?というプレゼンが行われました。

その後は各ピッチ者ごとに分かれ、参加者とともにそれぞれのお題に対するアイディアブレストを行いました。
参加者は、学生、経営者、個人事業主、会社員など、様々な立場の方が集まり、多様な観点からアイディアが飛び出しました。一條社長もディスカッションに加わり、時折真剣にメモを取る場面もありました。

3名のピッチ者は、これまで考えていなかった観点からのアドバイスや指摘に触れ、大いに刺激を受けている様子でした。また、参加者との新たな出会いや、特に大学生との接点は普段あまり無い機会であり、とても良い場になったという意見がありました。

最後に

最後は交流会を行い、参加者同士もネットワーキングを行いました。普段は出会う機会の無い方々同士が出会い、共に家業について活発に情報交換を行う熱量の高い場が形成されていました。

ご参加頂いた皆様、一條社長、本当にありがとうございました。皆様のおかげでとても学びの多い、その場にいた全員にとって有益な場が作れたと思います。
家業イノベーション・ラボでは、今後も家業を自分らしく改革した経営者をお呼びし、セミナーを実施する予定です。WEB上で情報を公開いたしますので、どうぞご期待ください。