家業×つくば~家業イノベーション・アイデアソン2020 vol.Ⅲ~

想像を遥かに超えるアイデアが 家業イノベーターたちの未来を切り拓く 家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン 2020~

「家業にイノベーションを起こしたい」。

「家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン2020~」(以下、「アイデアソン2020」)は、この思いを胸に抱いた4名の事業承継者の課題を解決し、参加メンバーとともに新しいビジネスチャンスを探っていく取り組みです。昨年は国内随一の科学技術拠点都市・茨城県つくば市を舞台に行われましたが、今年は全国から気軽に参加できるオンライン開催となりました。
2020年8月のキックオフ会から早4カ月。これまで、月に一度のオンライン開催のほか、Slack などを利用して家業イノベーターたちの近況や参加メンバーたちの各々の知見が随時アップデートされてきました。
ついに最終回を迎えた2020年11月25日は、家業イノベーターたちがこの先6カ月間に行うアクションプランを参加メンバーとともに練ることがミッションとして課せられました。そのため、グループディスカッションに費やす時間はこれまでよりも長く、それぞれのグループで熱い意見が交わされました。

課題解決に向けて、着実に前へ進む家業イノベーターたち
水戸市で印刷会社を営む「株式会社あけぼの印刷社」の山田周さんは、長年培ってきた印刷会社としての強みとWEBなどのデジタルをブリッジしたサービスの構築を課題に掲げていましたが、最終回は実際のクライアントである「オノセモータース」の小野瀬代表を交えてのディスカッションとなりました。そして、山田さんの傍らには「株式会社あけぼの印刷社」の主力である営業、デザイン、マーケティングスタッフも参加し、さながら本物の企画会議のような様相に。
「アイデアソン」としては異例となったディスカッションでは、すでに実施したプロモーション施策の検証から次のステップに向けての取り組みなど、リアルな意見が数多く出されました。その中には「オノセモータース」が持つ強みを最大限に生かすためのアイデアも。
これらをもとに山田さんは、「オノセモータース」のストーリー性をもたせたコンテンツをベースに、デジタルとアナログの融合をはかり、新規ユーザーの獲得を目指すアクションプランを掲げました。

日立市で70年余り続く老舗「御菓子司風月堂」の3代目・藤田浩一さんは、「和菓子業界が抱える7つの課題」の中から、収益性の高い看板商品の開発と和菓子ファンを増やすことに課題を絞り、解決に向けて取り組んできました。
第1回の「アイデアソン2020」で、茨城の特産である干芋を用いた看板商品の開発を決意した藤田さんは、その商品の試作を続ける一方、販路拡大とパッケージデザインについて参加メンバーたちに意見を求めました。寄せられたアイデアの中には、美食の国・フランスの大使のお墨付きをもらうや、デザイン関連の賞を獲得してPRにつなげるなどの意見も。最終回となる今回は、それらの内容をさらに深堀する議論が交わされますが、最終的には藤田さんがチャレンジしていることを多くの人たちに見せることが大事だという意見もありました。
今回の「アイデアソン2020」に参加して藤田さんは、「自分では想像もできなかったようなアイデアを参加メンバーからもらい、着実に前進していることを実感できた」と話しました。またそれが「楽しかった」とも。衰退が続く和菓子業界の起爆剤となるべく、藤田さんのチャレンジは今後も続きます。

8月のキックオフ会から著しく状況が変化したのは、茨城県八千代町で豆腐を中心とした食品製造業を営む「有限会社高橋食品」の高橋真弘さんです。当初の課題だった「直販とEC販売の強化」のうち、直販の課題解決に向けて新たなスタートを切っていました。それは直売所を自社内に設けることです。年明けオープンを目指し、すでに計画は着々と進んでおり、最終回では集客に向けた取り組みについて話し合われました。
健康志向の高まりに加えて、ビーガン実践者が急増している今、タンパク質を多く含む豆腐は世界的に注目されているヘルシー食材です。さらに、揚げたての油揚げやできたての湯葉を味わえるのは直売所だからこその強み。今回のディスカッションでは、イベントなどの開催のほか、大豆を使ったスイーツの開発も促されました。中でも、春から夏にかけて閑散期を迎える豆腐の売り上げを補う商材として、豆乳を使ったソフトクリームは期待できるとの声が。また、メディアを招いた試食会の実施なども認知度アップにつながると貴重な意見も寄せられました。
直売所では、近隣住民たちを交えた交流会のほか、地元の名産品と絡めた販売展開なども考えられ、今後は地域のコミュニティに欠かせない場所になりそうです。

最後は、和歌山県有田郡有田川町で柑橘を生産している「みかんのみっちゃん農園」の小澤光範さんですが、実はこの3カ月の間に小澤さんが掲げた課題「B to Cの販路確立」「規格外のみかんのフードロス問題」「有田地域で人を集める仕組み作り」はすべて解決したとの報告が。その一つは、これまで小澤さんの頭を悩ませていたフードロス問題です。実は、大手食品メーカーが加工食品や調味料に規格外みかんを使うことが決まり、今では在庫も追い付かない状況に。さらに、新型コロナウイルスの影響で人手不足に陥ったものの、思い切ってSNSで援農者を募ったところ、なんと100名近い応募があったというのです。うち3名は「みかんのみっちゃん農園」で働くことになり、そのほかの方たちは同じように人手不足に悩む近隣の農家に紹介することで地域に人が集まるようになりました。SNSを積極的に活用したのは、「アイデアソン2020」の中で特に勧められたことの一つだったので、小澤さんはそれを実践した結果だと話しました。
最終回となった今回、新たに掲げた課題は多忙な小澤さんをサポートする右腕を探すというものでした。さまざまな意見を聞きながら、小澤さんは自身が右腕に求めるイメージ像をまとめていきます。そして、みかんづくりに興味のある人にアプローチする方法を考えていくことと、自身のみかんにかける熱い思いをSNSで発信し、共感する人たちの母体を広げていくという、2つの軸で将来的に右腕となる人材を探していくと話しました。

家業への誇りを胸に、各々の取り組みを常に発信していく

「家業×つくば ~家業イノベーション・アイデアソン」では、誰かが発した一言がこれから先の家業の発展につながるヒントになります。そして、課題解決に向けての取り組みを応援してくれる参加メンバーとのつながりが家業発展の礎となります。
最終回の今回、4名の家業イノベーターたちの課題解決に共通していたのは、家業への誇りと各々の活動を発信していくことの重要性でした。それぞれアプローチ方法は異なりますが、今回のアクションプランを一つひとつクリアしていくことで、新しいビジネスチャンスも広がっていくことでしょう。
最後に、山田さん、藤田さん、高橋さん、小澤さんの半年間にわたるアクションプランの結果は、2021年6月に発表される予定です。果たして、どのような未来が開かれたのか、そのときを乞うご期待!