2021年8月より、外部人材と共に事業成長や課題解決に挑む「家業経営革新プログラム(以下:本プログラム)」を活用し、副業人材を受け入れた株式会社フルプロ代表取締役の徳永虎千代さん。
自社で製造するりんご等の商品をECサイトで展開していくために、顧客管理等バックオフィスの整備やマーケティング施策の戦略策定及び実行に、副業人材と共に挑戦しました。今回ご参画いただいたのは、個人事業主であり、農業コンサルティングサービスを提供されている方。まだ約4か月の活動期間ではあるものの、多方面でご活躍されているそうです。
今回は、本プログラムに参加しての感想や今までの取り組みについて、徳永さんにお話をお伺いしました。(参考 求人ページ:「長野のアップルラインが誇る、甘くて栄養満点な葉とらずりんごのファンを増やす!マーケティング戦略担当者を募集」
「餅は餅屋」専門性の高い課題にマッチした副業という採用戦略
――経営革新プログラムで、副業人材を募集しようと思った経緯を教えてください。
元々、個人向けのマーケティングを強化していきたいという思いと、販売数増加に耐えうるバックオフィスの強化をしたいと考えていました。
創業から現在まで栽培面積を増やし続け、生産量も右肩上がりで進んできましたが、それに伴い問い合わせやクレーム数の増加に頭を悩まされたり、購入してくれたお客さまの情報が蓄積されていく仕組みが俗人的になっていたりと、バックオフィスの部分が追い付いていませんでした。
生産数が増えていく中で、販売を強化したくても、施策検討の基盤となるCRMや受発注を支えるバックオフィスに不安を抱えていたため、そこを改善してくださる副業人材とご一緒できないかと考えていました。
――副業人材との協働は今回で2回目とのことですが、副業人材の魅力をどう感じられていますか?
やはり、特定の専門性の高い課題にアプローチするときは、その道のプロにお願いするのが一番良いと思います。餅は餅屋というやつですね(笑)
進め方の定石や正攻法を知らないまま、自分達だけで手探りで進めていくよりもはるかに効率よく進められますし、スポットでの関わり方になるので、費用対効果も良いなと感じています。
ブラッシュアップ会への参加とコーディネーターの伴走で感じたメリット
――今回の募集では、副業人材と取り組むプロジェクト内容のブラッシュアップの機会やコーディネーターが間に入ってマッチングをサポートする体制がありましたが、1回目の自社独自の募集と比べてどんな違いがありましたか?
ブラッシュアップ会では、元々抱えていた課題が再認識されましたし、明確に細分化される機会になったと思います。振り返ってみると、マッチングした人材もブラッシュアップ会の際に「こういう人材がいいかもね」とという話をメンターの方としたとおりの方がマッチングしましたし、人材の要件定義にもつながっていたなと。
あと、1回目の募集の際は自社だけで募集要項を作って、面談をして、採用の意思決定するのが大変でしたが、経営革新プログラムではコーディネーターが間に入ってくれるので、募集要項も伝えたいことを正確に書いてくれますし、人材の選考の際も壁打ちをしてもらいながら、どんな関わり方ができそうか等、しっかり選定するための意見をもらえたので良かったなと感じています。そのようなやり取りを経て、農業コンサルタントとして活動されている個人事業主の方とマッチングし、プロジェクトを進めていくこととなりました。
――多数の応募がありましたが、複数の人材と面談してみての感想を教えてください
今回は募集要項の段階でやりたいことをある程度伝えられたこともあり、面談の中では一人一人から「自分であればどう進めていくか?どうこの問題にアプローチしていくか」といった話を具体的にもらうことができました。
結論から言うとどなたも素晴らしい方で、どの人と組んでいたとしても素晴らしい成果が出せたと思います。だからこそ、明確に「この人と進めていく!」というのを決めるためには、採用する自分たちも、各人材の得意なことをどうやったら活かせるかを考えながら人材の方と関わっていく必要があると思います。
やるべきことが明確化され、着々とやりたいことが進んでいく感覚
――実際にプロジェクトが動き出してからの取り組みについて聞かせてください。
最初に取り組んだのは、社員全員との1on1ミーティングでした。実際に現地に来てもらい、社員が課題だと感じていることの洗い出しなど、私が同席しない中で聞いてもらいましたが、人材の方のコミュニケーション力が高く、皆フラットに組織の課題を出せていたように思います。
――徳永さんだけでなく社員全員からまず課題感や現状を伺ったのですね。結果どの課題から切り込むことにしたのですか?
結果、バックオフィス部分の中でも、電話での問い合わせやクレームを減らすことに着手することになりました。チラシなども積極的に配布していたこともあり、お客さまから当社にご連絡をいただく際には電話での連絡が多かったのですが、メールでの問い合わせに誘導するようにチラシを改善したり、コールセンターに1次受けしてもらう体制をとることで、今では会社の電話がほとんどならないような状態になっています。農作業していると結構電話対応が面倒に感じることも多いので助かりましたね。
あとはCRMの構築にも着手しました。ECサイトからの注文だけでなく、アナログなチャネルからの注文も月に1回集計してシステムに反映する決まりを作るなど、マーケティングに活用できる情報がストックされていく体制を作ることができました。
――本格的な攻めのマーケティングに挑む前の下準備ができたということですね。そこからはどのような取り組みを展開したのですか?
早速CRMを活用しながらマーケティングを実施しています。年始からの企画として昨年複数回注文された方限定でお得なセットメニューの販売に取り組んでいます。地域の蕎麦屋さんの生蕎麦やお漬物屋さんの商品と組み合わせでセット化するなど、副業人材の方にも、どんな打ち手を実施していくかのアイデア出しから関わってもらっています。施策の成功・失敗も大事ですが、なによりまず動ける状態になったということが大事かなと感じています。
――既にいくつか施策を動かし始めているのですね。他に人材の方と取り組まれていることはありますか?
たくさんあります(笑)果物の生産販売以外に農家民泊の事業も行っていますが、そこに泊まりに来た大学生と一緒に商品開発をする企画等、むしろ副業人材の方主導で進んでいるプロジェクトもあります。どんな加工品を作るかなど、一緒に考えていますね。他にも近日中にクラウドファンディング(下記に参考サイトを掲載)を実施しようと考えていて、そちらにも協力をお願いしておりがっつり関わってもらう予定です。
いろいろ出しましたが、何かを進めたいと思った時にそのための筋道を整理してくれて、やるべきことが明確になっていくのはすごくありがたいですし、スピード感持って取り組めるのがいいですね。
参考サイト:シェフ×七味のプロ×農家で開発!りんごスイーツ専用シナモン七味が長野から登場
おわりに
――実際に新しく起こり始めたことについて聞いてきましたが、副業人材を受け入れる中で組織に変化があったと感じることはありますか?
副業人材に入ってもらって、自分だけでなく社員も刺激を受けていますね。自分も含めまだまだ組織として若い中で、「お客さまがどう考えているか」や「一般企業ではどう合理化しているか」等のインプットなど、すごい人から学べるという環境が組織にとってもプラスになっていると思います。最終的には顧問的な存在になるのかなと。
実際に取り組みとしても新しいことが始まっていますし、社員へのインプットも含め、これからもっといろんなことができるんじゃないかと、自社の可能性がひと回りもふた回りも大きくなっている感覚があります。
――最後に、今後の展望を教えてください。
フルプロは今まで成長期を突っ走ってきました。そこに合わせて、最初の課題感にも通じますが、バックオフィス等にひずみが出てくる時期でもありました。そこが今回改善され始め、攻めのマーケティングができるようになってきたので、ここをバネにしながら、人材の方と共に5年後の成長に向けて挑戦していきたいですね。
■家業経営革新プログラムの概要・その他の事例記事はこちらから
https://kagyoinnovationlabo.com/about/keieikakushin/