【家業×副業人材事例記事】「時間を割いてでも参加した価値があった」副業人材を受け入れて

株式会社北海紙工社 執行役員 / 営業企画部 部⻑ / プリンティングコーディネーターの梅田 修平さんは、家業イノベーション・マッチングを活用して、2022年8月より副業人材を受け入れました。(参考 求人ページ:「【90年続く印刷加工会社の職人技を未来へ繋ぐ】新規事業の経営戦略見直し&実現に向けたサポートをいただけるパートナー募集!」https://yosomon.jp/project/2918
1人の副業人材とマッチングし、プロジェクトが進行中です。 今回は、梅田さんにYOSOMON!副業人材を受け入れた背景と、受入後の反響について、お話を伺いました。
■家業イノベーション・マッチング概要:https://kagyoinnovationlabo.com/about/matching/

寄り添い、共に考えてくれるパートナーと出会いたかった。

——まずは株式会社北海紙工社(ほっかいしこうしゃ)がどのような会社か教えてください。

北海道で90年続く印刷加工会社です。北海道は観光業が盛んで、お土産のお菓子や食品にはパッケージとなる「紙製化粧箱」が欠かせません。
弊社はその製造に必須の「打抜(うちぬき)加工」に特化してきました。

現在は、今までの自社にないような新しい取り組みにチャレンジしています。
2020年には、北海道でブランディングやオリジナル商品作成に力を入れている印刷会社4社で、
プロジェクトチーム「北紙道 hokKAMIdo(ほっかみどう)」を結成しました。

noteを活用した自社メディア「キホンのハコ」を始めたり、今までになかったデザイナーとの関わりを増やしたり、
直接の顧客を増やすための情報発信や、その一環でオリジナル製品を作ることなどに取り組んでいます。

弊社と組むことで高いレベルのものづくりができる、そう感じてもらえることを目指し活動を続けています。
そのおかげもあってか、国内外でデザインの賞をいただいたり、メディアに取り上げていただいたり、
ホームページ経由の問い合わせが来るようになったりと、少しずつ成果が出始めています。

——梅田さんはなぜ北海紙工社で働いているのですか?普段はどのような仕事を?

私の父が4代目社長で、後を継いだら5代目になります。
大学進学をきっかけに東京で生活を始めて、映像制作やクリエイティブ関連の仕事を経験した後、7年前に札幌の家業にUターンしました。
自社が今まで取り組んでこなかった、新しいプロジェクトに挑戦しよう!と思い、2018年にオリジナル文具ブランド「ほっかいしこう社」を立ち上げました。
得意とする打抜、合紙、箔押しなどの紙を加工する技術を駆使して、クオリティの高い商品づくりに取り組んでいます。

——印刷業界の現状と課題について教えてください。

印刷業界は現在、需要が減少している斜陽産業と言われています。特に紙の出荷量は減少傾向にあり、業界全体の需要も低下しています。
一方で、資材の値段が高騰するなどの問題もあり、業界としては多くの課題を抱えている状況です。

——変化に対する取り組みや、解決に向けて力を入れている事はありますか?

このような状況下で、印刷業界において求められるのは”価値の提供”だと考えています。
紙の印刷が減少する一方で、印刷に必要な技術や知識、そしてデザイン力や発想力は、ますます重要になってくると思います。

業界内では様々な取り組みが進んでいますが、先駆的な印刷会社では、自社の個性や強みを活かして、
高品質な印刷物を提供して成功している会社もあります。
例えば、環境に配慮した印刷技術や、デジタル技術を用いた印刷など、新しい技術を取り入れて業界の発展を目指す動きもありますね。
その中で、弊社はデザイナーやクリエイターとの協働や製品づくりを特に大切にしています。

——クリエイターやデザイナーとの協働を大切にしているのは、なぜでしょうか?

東京から北海道に戻ってきて、まず自社で加工した過去の制作実績を探しました。
すると、面白い事例が見つかりました。工場出身で技術を磨いた沖村さんという伝説の営業マンがいたんです。
沖村さんは我が強いけれど人情に熱く、会社の基礎を作ってくれた存在。
実は北海道の小さな町工場ながら東京の仕事も受けていたという衝撃の事実が発覚しました。
しかも、ファッション業界のDMなど、高いクオリティでエッジの尖った仕事が多かったんです。

そういう仕事がだんだん減ってきていたんですが「もっとこういう仕事を増やしていけば自社の強みになるんじゃないか・・・」と可能性を感じたのが大きな理由です。
東京にいた時も個性が強いクリエイターに囲まれていたので、クリエイティブやデザインの力を肌で感じていたのも背中を押す理由の一つでした。
そして、北海道には優秀なクリエイターが多いという環境にも恵まれました。
彼らの力を借りることで、面白いものや付加価値の高いものができたら会社のためにもなるはず。
何よりも自分が楽しみながら取り組めそうだな、と思いながら協働しています。

——プログラムに応募した当時の状況と、応募に至った経緯について教えてください。

応募した当時は「このままじゃいけない」と将来に危機感を抱いていました。
コロナ禍で北海道の観光需要やイベントなどが激減したこともあって、ある程度リスクをとってでも、事業を変えていく必要を感じていたんです。
そこで、事業再構築補助金を取得して、新しい事業を立ち上げることを決めました。

会社としては初めての取り組みで、専門知識もあまりなかったため、外部の方々の協力が必要だと感じていました。
どのような人材に関わってもらえたら良いのか悩んでいたときに、
たまたま「家業イノベーション・ラボ」で一鱗共同水産株式会社の本間さんと出会い、過去のプログラム内容について話を聞くことができました。
(参考:一鱗共同水産株式会社取材記事『「7倍速を体感した」副業人材を受け入れて』https://kagyoinnovationlabo.com/3340/)

弊社でも一緒に考えながら取り組んでくれるパートナーを募集したい!と思い、応募することを決めました。

緊張できる打ち合わせは、しあわせだ。

——数名からエントリーがありましたが、複数の外部人材と面談をしてみて、いかがでしたか?印象や感想、良かったことを教えてください。

今回は中山さんという方がパートナーとして関わってもらうことに決まったのですが、複数のエントリー数があった中で、中山さんは非常に印象的でしたね。
中山さん自身が副業に対して並々ならぬ真剣さを持って取り組んでいましたし、
ご自身が副業として関わる企業をどう決めているかというポイントも話してくれていました。

中山さんは自分の職能をよく理解していて、それをもっと活かしたいという意欲を持っていて、仕事に取り組む姿勢が凄く素敵だなと感じました。
中山さんにパートナーになってもらえたら、きっと活躍してもらえるだろうし、事業が前に進むイメージが湧いたので、
是非中山さんにパートナーになってほしい!と思い、お願いしました。

——無事、中山さんとマッチングし、プロジェクトがスタートしましたが、実際にプロジェクトが動いてからの具体的な取り組みを教えてください。

1ヶ月に2回ほど、オンラインでミーティングをしているのですが、実は毎回打ち合わせの度に、胃が痛くなるほど緊張しています(笑)

本質を突く鋭い質問を投げかけてくださるので、良い意味での緊張感があるんですよね。
緊張してしまうようなプロフェッショナルな方と一緒に仕事ができることは、非常に幸せだなと思いますね。

取り組みについては、基本的には新規事業に対するコンサルティングを中心に取り組んでくださっています。
新規事業の柱であるWEBサイトの制作を始め、DMや展示会の相談にも乗っていただいています。
中山さんは、”デザイン性の高い製品を作ることができる”という自社の強みをよく理解してくれていて、
常にその点を意識しながら意見をくれるのでとてもありがたいですね。

——基本はリモートで打ち合わせを重ねながらプロジェクトを進めましたが、いかがでしたか?

問題なくリモートで進んでいますが、コーディネーターに入ってもらって、3人で進めていることが大きいかもしれません。
副業人材である中山さんも優秀ですが、コーディネーターの存在にメリットを感じました。

なかなか自社のことを第三者にうまく伝えられないのですが、募集ページも作成してもらって、自分たちの思いを整理して伝えることができました。

1対1ではなくチームで進めることの威力にも驚かされましたね。
役割分担をうまく行い、能力を組み合わせてチーム編成することや、進むべき方向を整理し、
議論しながら進めることがプロジェクトを前に進めるためには大切だと学びました。

中山さんとのプロジェクトはまだ進行中なので、今後も議論を重ねながら良いものを作れるよう取り組んでいきたいです。
今では二人が居ないことは考えられず、契約を終えた後も引き続きプロジェクトに関わってもらっています。

——一度、東京で集まって合宿のような熱い議論もありましたね。

ずっと頭をフル回転していたので、大変でしたが、楽しかったですね(笑)
中山さんはタフで頭の回転が速いので、議論の最中にすぐに詳しい方に電話して聞いてくれたり、議論をまとめながら、僕の頭の中を整理してくれました。

中山さんはオンラインでの業務にも慣れており、リモートでの会議も不便を感じることはありませんでした。
ですが、オフラインでのミーティングはチームワークをより強固にして、グッとまとまった感覚がありましたね。

今回は最初ではなくて、オンラインでの打ち合わせを重ね、お互いの役割が固まった段階で議論したのですが、凄く良いタイミングだったと思います。
お互いに何ができるのかを探り、役割を明確化することで、チームワークをより一層高めることができました。

相談できる理解者がいる心強さ。

——今回、外部人材を受け入れたのは初めてでしたよね。YOSOMON副業人材を導入してみて、特によかったと思うところを教えてください。

「一人で抱えなくて良いんだ!」と思えたことが一番よかったですね。
ここまではわかるけれど、ここからはわからないから誰かに相談したい…という時に、相談できる相手かつ理解者が居てくれるのは本当に心強いです。
中山さんはまず一緒に考えてくれるので、とてもありがたいですね。

あとは、どんなコンセプトで、どんなお客さんに向けて、どんなことをしようかなと日々妄想しているのですが、
外部の方々に入っていただいたことで、そのアイデアやイメージがより湧くようになりました。

以前は“印刷”を中心にした場を作りたいと考えていたのですが、外部のこういう方とこういうやり方だとこんなことができそう!など、
チームづくりのイメージがより具体的になりました。

——今回のプログラムを通じて自社や梅田さんご自身に変化はありましたか?

自社の現状を俯瞰して見れるようになりましたね。
一緒に自社を分析したり、話を聞いてもらったり、「北海紙工社ってこんな会社で…」と説明する中で、
「御社の強みってこういうところですよね」と言ってもらう中で気づける事もあったり。

「梅田さんの人柄の良さが強みですよね」と言ってもらえたんですが、
そんなことは自分では思いもしていませんでしたし、自分自身も強みの一つになるんだ!という発見がありました。
気づくことでアイデアも広がりますし、一歩引いて見れるようになった感覚があります。

——現状の成果について教えてください。

応募する前は「何が大事なことなのか?」ということから悩んでいましたが、プログラムを通じてだんだん方向性や目的が整理され、
すべきことが明確になってきたことが大きな成果だと思っています。

WEBサイト制作を札幌のデザイン会社に依頼するのですが、企画や戦略が整理された状態で依頼するのと、
整理されていない状態で依頼するのでは、おそらく全く結果が違ってくると思います。
中山さんにはデザイン会社との打ち合わせにもリモートで入ってもらっていて、弊社の基礎の部分を固めてもらっている実感がありますね。

おわりに…

——今後の展望を教えてください。

新規事業は成功させたいと思って取り組んでいますが、単に事業を拡大するだけではいずれ限界が来ると思っています。
そのため、相乗効果のある新しい取り組みにどんどんチャレンジしていきたいと思っています。
そういった新たなチャレンジにも、中山さんやコーディネーターの江川さんを始め、外部人材の方々にももっと関わってもらいたいですね。

例えば、印刷カフェなどもやってみたいですし、東京進出も視野に入れていて、作らせていただいた紙製品を集めたショップもいいなと妄想しています。
お菓子のパッケージなどの仕事も多いので、紙箱でパケ買いできるようなショップもやってみたいですね。

——なんだか”未来の印刷会社感”を感じます!

実は「まち全体で一つの工場になったらいいな」と思い、様々な取り組みをしています。

東京では横持ち文化があって、箔押し専門の会社があったり、穴を開ける専門の会社があったりして、設備が限られているので協力しないとやっていけないんです。
一方で、北海道は横の繋がりがあまりなくて、自社で全て賄おうとする企業が多いんです。
でも、自社にある設備や技術しか使えないので、お客さんから「こういう仕様で作れますか?」と聞かれた際に、
自社の設備と技術ではできない場合、お断りする場合もあるんですよね。

私の場合、実現できる手段を様々な可能性を考えて、自社だけではなく様々な印刷会社の技術を掛け合わせて提案するケースが多く、
その提案を喜んでいただける事も多くあります。
自社だけでは難しくても、A社にある機械とB社にある機械を組み合わせれば、実現できることもあるんですよね。

私自身、周りの方々に協力いただいて感謝しながら形にしていくというのは自分のスタイルに合っているなと思っています。
印刷業界の個性や、技術や工場を掛け合わせていく事で、お客さんに喜んでいただけるものをこれからも提供していきたいですね。

印刷会社をうまくつなげ、全国各地で協力関係を築き、印刷業界を盛り上げていくことが私の目標と言えるかもしれません。

——最後に、検討されている企業さんに一言メッセージをお願いします。

時間を割いてでも「家業イノベーション・ラボ」のプログラムに参加した価値がありました。
採用や外部人材の活用をすべて一人で行うというのはハードルが高いですが、プログラムのお陰で実現することができました。

そして一通り経験した今でも、ゼロから副業人材を募集する!というのはハードルが高いな…と思います。
私のような家業後継者の方は「家業イノベーション・ラボ」のプログラムを活用したり、コーディネーターの力を借りたりしながら、
募集してみては良いのではないでしょうか。

能力も人柄も理想的!と思える方に出会えるかどうかは”運”の要素が強いと思っています。
中山さんに出会えた僕は、非常にラッキーです(笑)でも、一歩踏み出さないとそのチャンスは絶対に訪れないので、是非まずは行動してみてください。

素敵な方と出会えた時に「良い会社だな」「この人と仕事がしたいな」と思ってもらえるためにも、自分自身が仕事に対して強い思いを持っていることも大切ですね。

「本当に良い人が来るんだろうか」と僕も最初は心配でしたが、素敵な人と出会うことができましたし、実際の業務に非常に効果があったと感じています。
もし一回目でうまくいかなくても、数回チャレンジして理想の方と巡り会えたという事例もあるようです。
是非この記事を読んで興味を持たれた方はチャレンジしてみてください!

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https://kagyoinnovationlabo.com/about/keieikakushin2023/