こんにゃく製造の舞台裏に迫る!「家業後継者と巡るオンライン社会科見学」を開催しました。

8月5日に、大阪府堺市のこんにゃく製造業 中尾食品工業株式会社の工場見学ツアーを開催しました。今回は『”家業後継者”が実施する”家業後継者”のためのツアー』として、家業イノベーション・ラボ・コミュニティに参加する5名の家業後継者がツアーに参加しました。

ツアーの中ではこんにゃく製造ラインの紹介だけでなく、出退勤ツール等のITの紹介に加え、代表取締役の中尾友彦氏(以下 中尾氏)による経営計画書の紹介といった、同じ立場の家業後継者に向けたコンテンツを実施しました。

中尾食品工業の原材料へのこだわりを丁寧に紹介

まず最初に紹介されたのが、美味しいこんにゃくづくりに取り組む中尾食品が特に大切にしている要素の一つ「こんにゃく芋」の冷凍保管庫です。

中尾食品が使用するこんにゃく芋は全て有機栽培されたもので、土が着いたままの新鮮な状態で仕入れたものを、傷めないように丁寧に水洗いし、すぐに冷凍保管することで鮮度を保ちます。加えてツアーの中では、入荷時期の分かりやす表示や温度管理の徹底方法等の紹介がありました。 

参加者の中にはこんにゃく芋を初めて見るという方もおり、オンラインでは感じにくい大きさや重さについても、中尾氏が口頭で分かりやすく解説することで、参加者も理解を深めていました。

こんにゃく芋を手に取り、大きさや重さを伝える中尾氏

その他、こんにゃく粉や凝固剤となる灰汁をとるための木製のペレットといったこんにゃくの原材料についても紹介がありました。こんにゃく自体を知らない人はいないものの、こんにゃくに使う灰汁の原材料やこんにゃく粉の単価など裏側ならではの情報が目白押しでした。

そして、いよいよこんにゃくの製造現場に入っていきます。

原材料の一つであるこんにゃく粉の保管庫

こんにゃくの灰汁をつくる木質のペレット

「経営者」が案内する、「経営者・後継者」のためのツアー

工場に入る前の衛生管理の仕組みを解説した後に、こんにゃくの製造設備の紹介を工程に沿って行っていきました。

まず、こんにゃくの原料となるこんにゃく芋をすりおろし、すり下ろした芋やその他の材料をミキシング機で混ぜ、適切な粘りを持つ「のり」を作っていきます。そののりをしばらく寝かせた後、凝固剤などと混ぜ合わせて炊いた物が、みなさんの良く知るこんにゃくや糸こんにゃくとなっていきます。製造機器を紹介する際には、各機械の持つ機能や材料が加工されどのような形になるか等の詳細な説明が中尾氏からありました。

こんにゃく芋をすり下ろす機械で、こんにゃく芋の加工工程を説明

こんにゃく芋とそれ以外の材料を混ぜ合わせ、のりをつくる機械

のりと凝固剤を混ぜ、押し出していく機械

また、見学中も随時参加者からの質問にも回答していきました。参加者からは、

「他のイモ類は芽をとるのに、なぜこんにゃく芋は芽を取らないのか?」

「白いこんにゃくはどうやって作っているのか?」

等、こんにゃく自体に対する疑問を始め、

「工場の機械が故障した場合どう対応するのか?」

といった製造業経営者目線の質問など、同じ立場の経営者らしい質問も飛び交いました。

中尾氏も参加者の関心に応えるように、ITツールを用いた製造日報の管理方法やITツール導入のための補助金活用など、経営者が気になるであろうポイントをピックアップし紹介していきました。

今回のオンラインツアーは、経営者である中尾氏が案内するツアーであったからこそ、商品や製造へのこだわりだけでなく、機器やITツールの活用等、経営者でないと伝えられないような内容がふんだんに盛り込まれていました。

オンラインだから伝えられる、製造現場の臨場感

その後、製造ラインが実際に動くところを紹介するため、抹茶をベースにした「こんにゃくわらび餅」の製造過程を見せていただきました。

抹茶ベースの「こんにゃくわらび餅」に使用するのり

炊きあがり後に機械から出てくるわらび餅

炊きあげられたわらび餅が配管から排出され、ラインを流れて包装されるまでの一連の流れを丁寧に説明していただきました。参加者からも「製造工程で従業員がどんな役割を担っているのか、何をチェックしているのか」等を中心に質問があり、初めて見るわらび餅の製造工程に興味を持っていました。

製造後には中尾氏自身が出来立てのわらび餅を食べての食レポがあり、できたてならではの歯切れの良さ等、製造者しか知ることの出来ない情報の共有もありました。

今回、筆者が何より価値を感じたのは、製造の瞬間を間近に見ることで伝わる「リアルな緊張感」です。一般的な工場見学ツアーでは、衛生上の問題から製造現場に入ることが難しい場合も多く、ガラス越しで工程を見る事がほとんどかと思います。

一方オンラインツアーであれば、現場のカメラを通し、製造設備や職員の仕事の様子を近い距離で参加者全員が見ることができ、チャットを通して現場へのリクエストや質問を送ることもできます。今回のツアーではそれらの要素をうまく活用して、現場の臨場感が、参加者全員に伝わるような内容となっていました。

家業イノベーション・ラボ・コミュニティだからできること

その後、備品発注の仕組みや業務改善のための課題の見える化、内部監査による製造環境の改善等、企業活動を円滑に進めるための仕組みについても案内を行っていただきました。

発注中の備品を分かりやすく表示した備品発注ボード

また、出退勤管理で使用しているソフトや商品管理で使用する基幹ソフト、製造日報の紹介、経営計画書の紹介など通常のツアーでは決して見ることの出来ない内容についてもご紹介いただきました。

経営計画書について説明する中尾氏

ツアーの参加者からは、「他の製造業の現場をここまで見せてもらう機会は無く、面白かった」等、好評な意見が散見されました。参加者の中からは自社でも開催したいという方もおり、現在事務局で第二弾を企画しています。

今回のツアーは「家業後継者が開催する、家業後継者のための工場見学」という位置付けで開催し、ツアーの中では一般向けのツアーでは絶対に聞くことが出来ない前出のような内容が複数取り上げられました。

自社の内部情報を共有するツアーを開催できるのは、同じ立場の志を同じくして集う家業後継者仲間だからこそであり、ホストと参加者に信頼関係があるからこそです。家業イノベーション・ラボ・コミュニティでは、同期のいない後継者同士の横のつながりをつくる事を促進し、お互いに成長しあう仕組みづくりを今後も実践していきます。

▼家業イノベーション・ラボ・コミュニティへの参加はこちら(後継者限定)▼

https://www.facebook.com/groups/864442990556830