【家業経営革新プログラム】「7倍速を体感した」副業人材を受け入れて

一鱗共同水産株式会社 営業・広報部長の本間 雅広さんは、2021年7月よりYOSOMON!の副業人材を受け入れられました。
(参考 求人ページ:「水産仲卸の枠を超え、新たなプラットフォームをつくる。手触り感のある会員制ECサイト(アプリ)戦略提案を担うアドバイザー&マーケター募集!」https://yosomon.jp/project/1637

1人の副業人材とマッチングし、プロジェクトが進行中です。 今回は、本間さんに副業人材を受け入れた背景と、受入後の反響について、お話を伺いました

一鱗共同水産株式会社 本間 雅広さん

目利きのプロから直接買えるECサイトを作りたかった

――まずは仕事内容について教えてください。

一鱗共同水産は札幌市に昭和34年に開業した水産仲卸会社です。北海道の拠点的市場「札幌市中央卸売市場」で、国内・海外問わず水産物を札幌近郊の鮮魚小売店、量販店並びに大手スーパーの需要に合わせて仕入れ・販売を行っています。

――業界に対する課題感や、その解決に向けて力を入れている事はありますか?

水揚げ量が低下していることもあって、水産物の価格高騰・消費量の減少などの問題があります。そのため、少しでもコストを抑えるため、量販店も卸売市場外での仕入れが増えてきています。そのスタンスが悪いわけではないのですが、市場を経由することによる卸・仲卸のマージンを削るという発想が多くの量販店にあるのが現状です。

その原因は、中央卸売市場の価値・卸の価値・仲卸の価値が伝わっていないからだと考えています。 そして、中間マージン以上の価値を量販店に対して与えられていない、商品の値段ありきの商売になりすぎていることも課題であると感じ、現状を変えようと進めているのが”仲卸のブランディング”です。

ただの納入業者ではなく、一鱗共同水産の知名度を向上させて仲卸ブランドになることができれば、現在の商売がそのままでも量販店に対してメリットを与えることができるはず。2020年に「一鱗酒場」という飲食店を経営する会社とコラボした海鮮居酒屋をオープンさせたり、パン屋・ラーメン屋など異業種とコラボ、積極的なSNSでの発信、YouTubeチャンネルの立ち上げなどを通じて認知度向上に努めています。

――プログラムに応募した当時の状況と、応募に至った経緯について教えてください。

弊社は札幌に認可を受けて営業する「仲卸」です。主な取引先はスーパーやデパートの水産売場など”BtoB”が基本です。ブランディングを進める中で「買いたい」という声をいただく事が増えてきたのですが、市場法という法律でルールが定められていたり、札幌市のルールでは「第三者販売を禁ずる」という文言があり、原則、札幌市内での第三者販売は禁じられています。

取引先とも競合してしまいますし、何より信頼が大切な世界なので、同業者との関係をとても大切にしています。ですが、BtoCの中でもECサイトであれば取引先とは競合しませんし、ほぼ違う顧客層にアプローチをしていけば、既存の顧客にもプラスになるのではないかと考えています。僕たちの知っている商品で、一般の消費者の方には認知されていないものもまだまだたくさんあります。

商品提案力、営業力を高めていくことによって、結果的に水産仲卸の新しい可能性を生み出すことにも繋がるんじゃないかと思い、独自のプラットフォームを用いてECサイトを構築したいと思うようになり、今回、家業経営革新プログラムに応募しました。

―― どのようなECサイトを作りたいと思っていたのですか?

思いついたきっかけは、友人や知人から「こんなものはない?」「贈り物でカニを送りたいんだけど…」と、直接いただく問い合わせでした。実際に購入いただいた方からは「あんなに美味しいカニ、初めて食べた!」とか「来年もお願いしたい」と、どんどんリピートが増えていったんです。

“魚離れ”と言いますが、お金も買う気もあるけど、買える場所がなかっただけだったんだと気づきました。そして、僕たち仲卸から買う事が特別感にも繋がっているんだと思ったんです。コロナ禍によるコミュニケーションの減少もあって、オンライン上でそういった特別感を味わいながら、知り合いから買い物をするような場をインターネット上に作りたいと考えました。

常にユーザー目線でプロジェクトを前に進めてくれた

――数名からエントリーがありましたが、複数の外部人材と面談をしてみて、いかがでしたか?印象や感想、良かったことを教えてください。

「こんなに凄い人がくるんだ!」と驚きました。面談もオンラインでしたが、想像以上に色々と話せました。その中で、稲川 亮輔さんと是非一緒にやりたい!と思い、無事マッチング出来たので本当に良かったです。稲川さんは東京に住んでいて副業で関わっていただいたのですが、釣りと魚料理が好きで、水産業のDX化に関わりたいと前々からそういったプロジェクトを探していたのだそうです。僕の考えていることにも共感してもらえて「今までにない水産ECサイトを作りましょう!」と盛り上がったのを今でも覚えています。

――無事、稲川さんとマッチングし、プロジェクトがスタートしましたが、実際にプロジェクトが動いてから具体的な取り組みを教えてください。

7月9日にキックオフミーティングを行い、それからはリモートで週1〜2回、打合せしながら進めていきました。まずは競合調査や、開発方法をアプリとECサイトどちらにするかなどを決めていきました。あとは費用感についても調査してもらって、全体のコンセプトを一緒に作っていきました。

8月頃からは具体的なサービス体験やECサイトのフレームを整理していきました。稲川さんが常に議題を作ってプロジェクトをどんどん前に進めていってくれましたね。進める中でせっかくここまでこだわって作るんなら、補助金を活用出来ないか?という話になり、稲川さんに協力してもらいながら事業再構築補助金を申請することに。

稲川さんは常にユーザー目線で自分が使いたいサイトを作ろうとしてくれているので、儲かる儲からないじゃなくて「これがあったらいいな」といった視点で常に考えてくれているので、すごく助かっています。

――今回、謝礼として金額に上乗せして、旬の魚を贈られていましたよね。

はい。月に1回くらいのペースで、北海道の旬な水産物をセレクトして送っています。例えば10月は秋刀魚、お盆には蟹を送りましたね。稲川さんにはとても喜んでもらえて、僕としても嬉しいです。お金じゃない価値というか、5万円お支払いするよりも、5万円の魚を贈って喜んでもらえる方が嬉しいですね(笑)

一緒に世界をひっくり返す。こんな人が入社してくれる会社にしたい

――今回、外部人材を受け入れたのは初めてでしたよね。お二人の関係性もとても良好に見えるのですが、上手くいった要因はどこにあると思いますか?

「稲川さんだったから」という一言に尽きますが(笑)、稲川さんもあまり”仕事”だと思っていない事が良かったのかな、と思います。相談しても「いや、できないですよ」という事が全然ないんです。経営者思考で常に考えてくれています。

最初はECサイトを作るというミッションだったのに、いつの間にか一緒に事業計画書を作っているんですよ。そういった変化にも柔軟に対応してくれるところなども、仕事への価値観や考え方が似ているのかもしれないな、と思います。

稲川さんはいくら儲かろうが「お金ください」というタイプでもなくて、「世界をひっくり返す」ことにワクワクしているような人。食に対する興味もあって、よくインターネットで食べ物を買っているそうで、ユーザー視点で一緒に作れていることも良いバランスを取れているのかなと思います。

――今回のプログラムを通じて自社や本間さんご自身に変化はありましたか?

仕事が7倍速で進んでいくんですよ。「本物を見た」という感じで、優秀な方は7倍で仕事するんだな…と思いました。ちなみに”7倍”という数字は、10倍まで行くと録画のスキップみたいに次のシーンに飛んじゃうイメージで、ギリギリ過程が見えるのが7倍かな…と(笑)

こんなに凄い人がいるんだという事を知ってしまったので「稲川さんのような人が入社したくなるような会社にしていかないと!」と本気で思いましたね。突き詰めると、社長の人間力だと思っています。「本間さんと一緒に仕事したいです」と言ってもらえるようにしていきたいですね。 稲川さんみたいな人がフルコミットしてくれたら半端じゃないだろうなと思いますし、そういう方が4〜5人いたら、もう最強ですよね(笑)

――現状の成果について教えてください。

当初の予定よりは補助金の申請もあって遅れてしまっているのですが、企画書や事業計画書が出来上がり、全体の骨格が決まった段階です。問題がなければ、2022年の7〜9月頃にリリースできるはずです。是非、楽しみにしていてください!

おわりに

――今後の展望を教えてください。

まずはリリースに向けて完成度を高めていきます。稲川さんには今後も携わってもらう事が決まったので、ECサイトの成功に繋げていきたいです。5年後の売上目標は7億円。稲川さんと事業計画書を作りながら「計画通りいくと億万長者ですね!」と笑いました(笑) 今後、僕たちと同じような卸業者にもコンサルティングする形で、仕組みをみんなで作っていけたらいいなとも思っています。良いモデルにしていきたいですね。将来的にはリアル店舗にも繋げていけたらいいな、という夢もあります。

―― 最後に、検討されている企業さんに一言メッセージをお願いします。

迷っていたら絶対にやった方がいいです。スピード感は一緒にやってみないとわからない事でした。もちろんクオリティの話もあると思いますが、それはやりながら一緒に磨いていけるので、僕にとってはスピードが一番大事。是非、7倍速を実感してほしいです!


――コーディネーターから見た、プログラム参加前後の変化

本間さんはプログラム参加前から、業界や会社を変えようと様々な挑戦をされていましたが、なかなか一緒にやってくれる人が居ないという悩みがありました。

今回マッチングした稲川さんは事業パートナーとしてだけではなく、実際に東京でお会いして事業計画を一緒に作ったり、定期的にミーティングしながら魚について語り合ったりなど、仕事以上の関係性を構築していたように思います。

「プログラムが終わった後も、永遠に稲川さんには関わり続けてもらいたい」と本間さんがおっしゃっていましたが、”共に取り組む理想の人物像が明確になった事”で、今後、人事・採用やチームを構築する際の指標が得られた事が、参加後の大きな変化ではないかと思います。

また、どんなに細かなタスクでも一つ一つのタスクが完了するまでのスピードが、全体の進捗にも大きく影響する事も体感できたため、今後事業を進めていく上でのスピード感も参考になったのではないかと思います。

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