【家業経営革新プログラム】副業人材と挑む、銅専門の町工場の営業改革

愛知県名古屋市の「銅専門の加工業者」として業界内で独自のポジションを確立している「株式会社石垣商店」さん。
営業戦略マネージャーを副業で募集し、営業力の強化を図る経営革新プログラムにチャレンジしました。
(求人ページはこちら:https://yosomon.jp/project/1664

プログラム参加の感想を、社長である石垣雅裕さんに伺いました。

数字に対してもっともっとちゃんと向き合わないといけないと感じました

――プログラムに応募した当時の状況と、応募に至った経緯を教えてください。

元々営業活動を体系立てて行っておらず、既存の顧客の要望に答えるスタイルでやってきていました。経営の数字としても、売上・利益共に徐々に減ってきている中、どうにかしないといけないと感じつつも具体的な方向性に迷っている時、クラブハウスで家業イノベーション・ラボの宮治さんのお話を聞いてこのプログラムの存在を知り、応募に至りました。

――ブラッシュアップ会に参加されましたが、参加してみてどのような変化がありましたかか?

売上を上げるためには新規顧客の開拓が絶対に必要と考えていましたが、メンターからの指摘により、そこに縛られる必要は無いのだと思ったことが大きな変化です。
メンターからは、既存顧客にもう一品買ってもらうキャンペーンをやってみるアイディアや、利益率の高い商品に顧客がアクセスしやすい環境を作ることなどの具体的な案と、外部人材にはBtoB営業の責任者経験のある人が良いのではという示唆をもらいました。

――その後、副業人材を募集するにあたって、さまざまな人材と面談をされましたが、どのような感想を持ちましたか?

しっかりとした専門性を持っている人、自分の事業をやっている人などがたくさんいるなと感じました。複数名と面接をしましたが、様々な人が副業人材として登録しているのを知れて良かったです。今回採用した方以外で印象に残っているのが、経営企画が得意な方がお一人居たので、もし機会とタイミングが合えば、経営計画を立てるサポートをしてもらう可能性もあったのかなと思います。

今回参画してもらった外部人材は、営業を下から上り詰めたような人です。建材などの接着剤のメーカーの方で、大きな声、元気な笑顔、上手にものを言う、というザ・営業という感じの人です。これまで自社にいなかった古き良き営業といった人でして、核心をついたお話をされますし、人の心をつかむのが上手い人だなという印象です。

――人材が参画し、その後はどのようにプロジェクトが進んでいきましたか?

外部人材と自社の営業と交えてディスカッションをする中で、自社の営業を外部の人に見てもらうことがなかったので、何が足りていないのかや、基本的なことができていなかったりとか、そもそも人材が足りていないということなど、売上を増やす上での課題を理解することができました。これまでは自分だけでは分からなかったことを、総合的に見るきっかけになっています。

まず1か月目は、日々の営業活動がどうなっているか、売上の目標、達成率がどうなっているか、それをぱっと数字で社内に伝えられるようにする、というところから始まりました。

2か月目から3か月目は、営業戦略としてどういうところを狙うのか、実際に動くにはどうするのか、といった具体的な話を詰めていき、その中でやっぱり人を採用する必要があるね、といった話に徐々になっていきました。

4か月目以降は、ZOOM上のやり取りだとやりにくいというのがこちらのメンバーから出たため、実際に一度人材に自社に来ていただき、商品を見てもらい、メンバーの営業スタイルをヒアリングしてもらいました。そうした中で、本質的な経営課題は営業に限った問題ではないのではないか、という話になり、改めて当社の課題を総合的に見てもらいました。

粗利が高い商品がどれかを把握できていないことが問題でもあるし、営業が取ってきた案件を実行するという体制もまだまだ足りていない。営業を強めるにあたっての組織づくりにも課題があるという指摘を受けまして、自分も話している中でやっぱりそうなのかと感じました。また、さらには、社長である自分がそこに向かって会社をどうしていきたいのかの社内への発信も足りていないと指摘もあり、自分としてはやってきたつもりではあったものの、まだまだ足りていないのかと感じました。

当初は営業の課題を改善するという観点で様々なアドバイスをいただきましたが、徐々に、経営全般のことですとか、組織をどうまとめるのか、メンバーの意識をどうやって揃えるのかということを、やはり給与体系や賞与も含めて改善をしていくべきなのではと、総合的に親身になって考えてくださいました。

――なるほど。様々な指摘があったのですね。その内容に対してはどのように思われましたか?

そうだなあという感じです。もともと、売上をアップさせたいというのは根底にありましたが、そこだけに目を向ければ良いかというと、そうではないなと薄々思っていました。外部人材の人から見てもやはりそうだったのだなと思いました。

――今回のプログラムを通じて、自社とご自身について、どのような変化がありましたか?

まず自社の変化としては、売上に対して数字を追うようになりました。月末に売り切ろうと製造のメンバーも動くようになりましたし、納期に遅れないようにギリギリまでやろうというような変化も生まれてきています。営業も、これまではあとどれぐらいで目標を達成するとか、どれぐらい未達なのかが分かっていなかったのが、組織として分かるようになりましたし、各々が気づくようになりました。

営業のメンバーと戦略を話す機会も増えました。外部人材がいるからこそ本音が聞けるようになりましたし、営業に対してもっとちゃんと考えようという空気が出てきました。

自分自身の変化としましては、社内にもっと発信しなくてはいけないと思うようになったことが、一番感じる点です。また、数字に対してもっともっとちゃんと向き合わないといけないと感じるようになったことも大きいです。これまでは、粗利は、固定費は、顧客別の利益は、というところまでは深く考えておらず、ざっくりとしていたので、そこに対する意識が変化しました。
外部人材の方が当社に来た際にも、この商品はどれだけの売上と利益なのですか、と聞かれたのですが、そういう視点で考えていなかったため即座に答えられませんでした。そういったところからも、今後は売上や利益の把握をしっかりとしていかなくてはいけないと感じています。

――今後の展望について教えてください

外部人材との契約は、まずは2022年1月で契約終了です。その後については営業のメンバーと相談して決めるつもりです。どういう形になるかはちょっと見えていないです。今回の振り返りもしつつ、リアルでお会いできる方が良いのか、オンラインで進めていくのかも検討したいと思っています。
一方で営業についてだけではなく、ちゃんとした仕組みがある企業はこう考えているよという観点でのアドバイザーとして、営業以外のメンバーを巻き込んでやってもらうのはありかもしれないです。

プロジェクトの今後としては、まずは営業のメンバーが足りないため、募集をかけて人を採用するのが始まりのきっかけになると思います。採用をし、体制を作り、どう動けるかを検討していきたいです。また、会社としてどの商品を注力して売っていくのか、それでいくら利益を上げるのか、といったところを数字として出し、社内で共有していくことが必要だと感じています。

また、別の副業人材の活用に関しては、人事評価制度の構築などは、自分一人では出来ないため、進める時には外部人材が必要だなと感じています。
適材適所で進捗を確認してくれるプロの人材がいると会社は進んでいくという実感を持っています。

■家業経営革新プログラムの概要・その他の事例記事はこちらから
https://kagyoinnovationlabo.com/about/keieikakushin/