次期経営者の参謀は、大企業の副業人材。未来づくりに向けた一手とは?
大阪で土木工事の施工管理に特化した事業を営む「豊開発株式会社」さん。2020年に30周年を迎えるにあたり世代交代の準備をすすめるために、外部人材とともにこれから5年間のロードマップをつくる経営革新プログラムに挑戦されました。
(求人ページはこちら:https://yosomon.jp/project/1672)
プログラム参加の感想を、専務取締役の清水勇輝さんに伺いました。
――プログラムに応募した当時の状況と、応募に至った経緯を教えてください。
当社は創業者が土木工事業の経験を活かし1990年に大阪市で創業した会社です。特徴は重機や職人を自社で抱えることなく土木工事の施工管理に特化した事業モデルで、大手ゼネコンが担う安全・品質管理業務を一次下請けとして担える技術をこれまで30年間、高く評価いただいてきました。
私はセキュリティ業界の上場企業で経営企画等を経験した後、2018年に当社に入社しました。創業者の息子として2023年(※)に経営を引き継ぎ、父が創業した会社を100年続く企業にしていきたいと考えていた時に、経営革新プログラムのことを知りました。※当初の予定。実際は2022年4月に事業継承実施。
これまでは副業の方と一緒に何かやるなんて考えたこともなかったですが、なにか専門性がある人に伴走してもらえることと、自分が抱える課題意識にたいして具体的な成果物を出せるのが今の状況に合っていると思い参加しました。
――プログラムの一環としてブラッシュアップ会に参加されましたが、参加してみてどのような変化がありましたか?
ブラッシュアップ会では、代替わりを見越して自分がやりたいことをつらつらと発表したところ、メンターの方から「豊開発としてやりたいことと、自分がやりたいことがごちゃ混ぜになっている」と指摘をいただきました。そのフィードバックも踏まえて、これからやりたいことを「会社としてやりたいことなのか清水個人としてやりたいことなのか」をまずは区別・整理した上で、会社の中期経営計画に落とし込んでいきたいと考えるきっかけになりました。
――副業の外部人材と面談をしてみて、どのような感想を持ちましたか?
募集をかけたら、思っていた以上に沢山の方から応募があり、驚きました。同時に、多くの方に反応をもらえて嬉しかったのを覚えています。面談を行い、ITなど何かのスキルに特化した方が多かった印象ですが、今回のプロジェクトでご一緒する方に関しては、マーケティングや事業企画など、バランス良く事業を俯瞰できる方が適任だなと感じました。
今回、最終的にご一緒した外部人材の方は大手企業の経営企画の経験がある上に、歳も近くて話がしやすく、資料化も得意だったので魅力的に感じました。
――外部人材が参画し、どのようにプロジェクトが進んでいきましたか?
外部人材の方とは週に一度、夜9時から定例のオンラインミーティングをしていました。最初の3回は課題をヒアリングしてくれて、最初は人事制度が課題ですねという話になり、そこから話を深めて行きました。各論を扱いながらも全体像とのつながりを見てくれていた印象でしたね。
ミーティングの運用や雰囲気としては、変に気を遣わずにやれたのがよかったです。1回の打ち合わせのうち1/3くらいはアイスブレイクというか雑談が出来たので、お互いの理解が深まってコミュニケーションを取りやすかったと思います。
また、外部人材の方は、毎回1時間程度で終わるようにタイムマネジメントしてくれていて、ダラダラせずにプロジェクトを進められました。打ち合わせ時間を長く取るよりも、レジュメなどのたたき台や話のネタや、話したことをデータ化して整理するのに力を割いてくれていました。そのおかげで話がしやすかったですし、次の打ち合わせまでに何をやるかも明確でした。
対話を深めていった結果、プロジェクトのゴール(成果物)として、社員中心に中期経営計画とビジョンをつくる合宿をやろうということになりました。外部人材の方には、ファシリテーターとして入ってもらいます。それまでに、デジタル化や広報などの業務でやるべきことのタイムラインも引いてくれ、5年後にむけて何をすべきか、何が必要かの整理が進みました。
――今回のプログラムを通じて、自社とご自身について、どのような変化がありましたか?
このプログラムと並行して、会社の30年の歴史をまとめた「社史」をつくっていました。会社の歴史を紐解きながら外部人材の方と話をしていたことで、経営を引き継ぐものとしての頭の中が整理されていきました。正直、これまでは「自分が代表になったら別事業をつくって会社を変えていこう」と思っていましたが、この経験があったおかげで会社の歴史のなかで「何を大切にし、残していくべきか」についての認識が深まり、次期経営者としての価値観の言語化が進みました。
会社の歴史を振り返って、残す部分と変えていく部分を誰かに話していくなかで、もうひとつ気づきがあったのは、「やはり人材が必要だよね」となり、新卒採用に取り組んでいます。
この会社を引き継ぐにあたって、父が30年やってきて、社員さんもいて事業のノウハウもあるなかで潰してしまうのはやはりもったいないし、もっと社会に役立ちたいと思っています。
実は、事業承継を一年前倒して、2022年から代表になることになりました。この事業承継のなかでも色々取り組ませていただきましたが、継ぐまでの経験談が誰かの役に立つなら、記録に残す意味でも発信したいと思うようにもなりましたね。例えば株の譲渡などリアルな話もそうですし、自分の場合は営業や現場などの実務ラインに入るのではなく、最初から将来をつくる人として振り切って家業に入った、比較的珍しいパターンなのでおもしろいかなとは思います。
――今後の展望について教えてください。
今回のプロジェクトで整理、言語化したことを行動に移す。まずはそこですね。代表権を持つとなると、たとえば採用ひとつとっても決裁・判断を自分が持てるようになる。でもそれを1人でエイヤで決めていたら今と変わらないので、組織として計画を立てて「こういう人材が欲しいよね」という風にやらないといけない。
経営に関心を持つ人が社内にまだまだ少ないのが課題かなと思っていますが、外部人材の人と一緒にやっていくビジョン合宿も、社員のみんなと一緒にやっていくための一歩です。みんなが経営の意識を持ち、方向感をあわせる。そして、私がいなくても仕事がまわる仕組みをつくる。自分の仕事は、会社の未来を語る、社員が力を100%発揮できる環境や仕組みを作る、自分より優秀な人を連れてくることだと考えています。
■家業経営革新プログラムの概要・その他の事例記事はこちらから
https://kagyoinnovationlabo.com/about/keieikakushin/