【家業経営革新プログラム】副業人材×大学生インターンで事業再構築を。老舗水産加工会社2代目の「EC事業」への挑戦!

――布施商店について教えてください

布施商店は大正元年に創業、宮城県石巻の水産品を中心に買付し、日本全国に届ける水産加工会社です。2011年東日本大震災により、本社社屋、工場が津波によって流出を経たのち営業を再開し、鮮魚の全国出荷、産直取引、一次加工など業態を変えながら成長を続けています。

私は大学を卒業後、大手総合商社に勤務し、全国、世界を渡り歩く商社マンとしての経歴を邁進していました。 東日本大震災をきっかけに事業継承を考えはじめ、苦悩の結果、地元である石巻に戻ることを決意し、2018年に実家の家業である株式会社布施商店に転職、2021年に代表取締役に就任しました。

株式会社布施商店 布施太一さん

――今回のプログラム参加の理由は?

布施商店の強みは、魚の品質を第一に考え、手さばきによる鮮魚加工への拘りです。特に最も取り扱いが多い魚種は三陸石巻の前沖で漁獲される真鱈。色がほんのりさくら色で透明感がある真鱈を「さくら真鱈」と名付け、キラーコンテンツとした布施商店のブランディングを進めていました。

しかし、環境変化により計画の修正を余儀なくせざるを得なくなってしまいました。それは「漁獲」の減少です。「さくら真鱈」によるブランディングは三陸前沖を前提としていました。しかし、ここ数年真鱈の漁獲量が激減。「このまま同商品を軸に進めるのは難しい」と判断し、新たな事業の再構築計画を進め始めました。その事業が今回の経営革新プログラムで取り組んでいる「BtoCプロジェクト」です。

布施商店の商品構成は真鱈をはじめとした鮮魚が中心だったため、まずはBtoC向けの商品開発に着手。そして満を持してECサイトの制作を開始したのが2020年暮れのことです。私にとってEC販売は初の試みであり、実績もノウハウも無い手探りの状態でのスタートでした。本来、BtoCを推進していくためにはキラーコンテンツとなる主力商品が必要であることはわかっていました。しかし、商品開発からまだ日が浅く、主力商品に育ててからのスタートでは遅くなってしまう。。悩み抜いた時、EC制作をお願いしているWEBデザイン会社からの「商品ではなく人をキラーコンテンツとしてEC販売していきましょう」という提案を受け、「この商品を買いたい!から、この人から買いたい!」という「人」をキラーコンテンツにすることにコンセプトを変更したことで生まれたのが「仲買人、タイチ」(YouTubeチャンネルの名称。サイトはこちら)です。

そのコンセプトでYouTubeをフックに、ECサイトのファンづくりを地道に続けています。時間も手間も掛かりますが、事業をゼロから作る覚悟もできました。しかし、プロジェクトを進めていくためにどうしても事業パートナーが欲しいと思い、今回の経営革新プログラムに応募をすることにしました。

ECサイト画像

何より感じたのは「責任感」と「情熱」

―― 副業人材の導入に至った経緯を教えてください

コーディネートを行うフィッシャーマン・ジャパン(以下FJ)とは石巻に帰る前からの付き合いがありました。Uターン後もFJから何度か副業人材の活用の案内を受けてもいましたが、当時はまだ「なんかしっくりこないな、、」と導入には至っていませんでした。

今回は副業者への期待、やって欲しいことが明確になっていたこともあり、GYOSOMON(※)の導入を即断、募集を開始しました。そこで紹介された人材が新庄氏でした。
(※GYOSOMONとは、副業兼業マッチングサイト「YOSOMON!」とFJとの共同プログラムの名称です。報酬が魚で支払われるというユニークなプログラムであり、そこに参画する副業人材のことも「GYOSOMON(ギョソモン)」と呼称しています。サイトはこちら

新庄氏のキャリアは素晴らしいものでしたが、何より感じたのはプロジェクトに対する「責任感」「情熱」でした。新庄氏は本気で関わってくれようとしてる、しかも無給(魚払い)で、事業に関わってくれようとしている、という気持ちをひしひしと感じました。新庄氏の本気度合いを肌で感じ取ったことで、私自身の覚悟もさらに強くなっていきました。

また、プログラムのブラッシュアップ会でのメンターであった宮治氏より、事業への意見やアドバイスをもらった中で、「ちゃんと今のお客さんへアプローチし、今の商品でお客さんを開拓したほうがいいのでは」と言われたことは事業計画を見つめ直すきっかけになりました。こういった後継者として事業再構築を行ってきた先輩の意見を聞くことはそうそうなく、とても有用でした。

社長 ー副業者 ーインターン生のハイブリッド型の体制

――事業の進捗状況はいかがですか?

7月からYouTube、8月にはECサイトのオープンとスケジュールは確定しました。パートナーとしてGYOSOMONの新庄氏の参加も決まり体制もおおよそが整ったものの、プロジェクト実行に向けてもう一つ課題が残っていました。それは現場=石巻での私のサポート役です。

YouTubeの制作・配信を定期的に行うには一人では到底キャパが足りず、されど布施商店内にプロジェクトをサポートできる人材はいない状況でした。。再度FJに相談し、提案されたのがインターン生の導入でした。もう悩む暇はないな・・・と、こちらも即断で導入を決定。そこで紹介されたのがFJに長期インターン中の磯部君でした。

2021年5月から、「社長―副業者―インターン生」のハイブリット型の体制でプロジェクトがスタートしています。
※インターン生は現在3名体制。磯部君(東北大・石巻在住のリアル参加)、河田さん(山形大・米沢市在住のオンライン参加、月1回程度石巻で活動)、伊東さん(立命館大・石巻在住のリアル参加)

実施後半年以上たちますが、毎週1回(木曜日)の定期ミーティング、週1回(木曜日)のYouTube配信、その間でのYouTube撮影・企画・振り返りというルーティンスケジュールを留めることなく実施し現在も継続しています。

―― 今後の展望について教えてください

新庄氏から最初に言われたのは「EC事業が軌道に乗るまで3年は掛かる」という言葉でした。そのため、成功し続けるまでやり続けると決意し、プロジェクトを推進し続けていきたいと考えています。(※2021年12月23日時点、・YouTube作成動画数36本、・YouTube登録者数420名)

計画していたプランは順調に実行できていますが、「集客数の伸び悩み」という新たな課題に直面中です。当初、YouTube登録数、EC購買者数ともに順調伸び続けていましたが、最近その拡大が鈍化し始めています。一方で、この大きな「壁」はチーム全員で認識できていることは心強いです。むしろ、「ここからが勝負!」とチーム内の士気が高いことが何よりも強みとなっているように感じています。

【人材観の変化】

GYOSOMONと仕事をしたことで感じたのは、そういった人材と事業の中で絡めるんだなということです。以前FJから提案を受けた副業募集を断ったのは、副業人材の立ち位置が難しいという懸念からでした。経験上、コンサル=外注としてお金払った方と事業を進めた方が順当だと思っていたためです。しかし半年間を振り返ると、何の問題もなくチームとして協働できたことにむしろ驚いています。

また、インターン生がまともに戦力になっているというのもこの事業ならではだと思います。以前は「学生に何を任せたらいいんだろう?」と不安に感じていましたが、今は、もはや依頼しているという感覚ではなく、欠かせないパートナーとなっています。

―― インタビューを終えて、コーディネーターから見た変化

GYOSOMON(副業者)+インターン生(大学生)は、ありそうでなかった組み合わせです。太一氏が今まで考えたこともなかった(不安を感じていた)外部人材により新規事業は推進されており、「成功し続けるまでやり続ける」という強い意志を支えていることを感じました。何より、両者に対しての信頼感を強く感じます。今後もGYOSOMON(副業者)+インターン生(大学生)の形を継続していきたいという言葉に太一氏の強い決意を感じました。

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https://kagyoinnovationlabo.com/about/keieikakushin/